死亡慰謝料が増額される条件とは?
交通死亡事故での刑事と民事
今回は、ご家族が交通死亡事故にあった場合の慰謝料について解説をします。
交通死亡事故が起きた場合には、刑事事件と民事事件が併行して進んでいきます。
刑事事件は、国家と加害者との関係ですから、被害者のご遺族は直接的な当事者ではありません。
しかし、刑事事件での被告人の量刑には、遺族の被害感情も考慮されますので、完全な部外者というわけではありません。
死亡事故で被害感情がどのように刑事裁判に影響するかというと、まず、警察や検察庁で被害者遺族の事情聴取が行われ、供述調書が作成されます。
その供述調書が刑事裁判に提出されることになります。
また、交通死亡事故の遺族は、刑事裁判に参加することができる場合があります。
それが「被害者参加制度」というものです。
被害者参加制度を利用すると、被害者の遺族が、刑事裁判に参加して、意見などを述べることができます。
それによって、遺族の被害感情を裁判所に示し、量刑の一考慮要素としてもらうことができます。
交通死亡事故の慰謝料について
次に民事事件についてですが、これは損害賠償という法律問題となります。
損害賠償請求できるのは、死亡事故においては、被害者の相続人ということになります。
相続人は、配偶者や子供、親、兄弟姉妹です。
交通死亡事故で請求できる損害項目には大きく4つがあります。
・葬儀関係
・死亡逸失利益
・慰謝料
・弁護士費用
その他死亡までに治療等を要した場合には、治療費等が加わることになります。
葬儀関係費については原則として150万円以内とされています。
死亡逸失利益というのは、生きてれば仕事をしたりして得られたはずの収入を損害として計算するものです。
仕事をしていれば死亡事故の前の年の年収額を参考にして計算します。
専業主婦なども、他の人に頼めば当然お金がかかるので、平均年収などをもとに逸失利益を計算することになります。
未成年者などは、働いていないことが多いのですが、将来的には仕事をして収入を得るはずであるという考え方をもとに、平均年収額等を基礎として逸失利益を計算することになります。
死亡慰謝料については、被害者が死亡したことによって被った精神的損害を慰謝するためのものということになります。
被害者の家庭における立場によって相場が決まっています。
・一家の支柱の場合 | 2800万円 |
・母親・配偶者の場合 | 2500万円 |
・その他の場合 | 2000万円~2500万円 |
過去の裁判例から、一般的には、このように死亡慰謝料の相場が決まっています。
これは被害者本人の慰謝料ですが、このほかに、近親者には、近親者固有の慰謝料が認められる場合があります。
弁護士費用については、示談交渉では認められないのが一般的ですが、裁判を起こして、判決までいった場合には、損害賠償額の約10%の弁護士費用が、加害者の負担とされるのが一般的です。
死亡慰謝料が増額される場合
以上で説明したのは、一般的な相場としての死亡慰謝料ということになります。
しかし、個別の事情によっては、相場ではなく、死亡慰謝料が増額される場合もあります。
死亡慰謝料が増額される場合を分類すると、大きく分けて、次の3つの場合が考えられます。
・被害者の精神的苦痛が大きいと思えるような場合
・被害者側に特別な事情がある場合
・その他の損害賠償の項目を補完するような場合
まず、被害者の精神的苦痛が苦痛の場合と比べてより大きいと思われるような場合には、死亡慰謝料が相場より増額されることがあります。
例えば、加害者は飲酒運転をしていたり、著しいスピード違反や赤信号無視など、悪質な運転行為だった場合には、被害者側の精神的苦痛が通常の場合よりも大きいと評価されて死亡慰謝料が増額される場合があります。
次に、被害者側に特別な事情がある場合としては、交通事故に遭って、胎児も死亡したような場合には、被害者側に特別な事情があるということで精神的損害も大きいと評価されて、死亡慰謝料が相場より増額されるケースがあります。
他の損害項目を補完する場合というのは、例えば逸失利益の計算が難しいような場合にその損害額を補完する意味で死亡慰謝料を増額するような場合のことです。
死亡慰謝料総額で注意すべきこと
ただし、死亡慰謝料の増額については注意することがあります。
それは、死亡慰謝料の増額は、被害者側が主張しない以上、認められないということです。
まず、相手の保険会社は、被害者遺族が何も言わない以上、死亡慰謝料相場より増額してくれるくれる事はまずありません。
なぜなら、保険会社としては、会社として利益を出すためには、できるかぎり支出を抑えなければならないためです。
次に裁判を起こした場合ですが、遺族側が何も言わなければ、裁判所は、慰謝料を増額してくれる事はありません。
これは、日本の法律では、裁判所は、被害者が主張する以上のものを認めてはならないとされているからです。
したがって、被害者遺族は、交通死亡事故において、慰謝料増額の事由がある場合には、それを欠かさず主張しなければなりません。
ただ、交通事故の素人が、慰謝料増額事由を把握するのは難しいことでしょう。
そこで、交通死亡事故の場合には、必ず弁護士に相談するようにして、死亡慰謝料の増額事由がないか確認することが必要となってきます。
そして、死亡慰謝料の増額自由がある場合には、積極的に裁判を起こし、死亡慰謝料の増額事由を主張することが望ましいといえます。
ただし、弁護士にも得意分野と不得意分野があります。
したがって、死亡事故の遺族としては、死亡事故を得意とする弁護士を探すことが必要になってきます。
今は、インターネットが普及していますので、インターネットで検索し、交通事故、特に死亡事故を得意とする弁護士を探すことが良いでしょう。
死亡事故の損害賠償額は、被害者の「命の値段」です。
必ず適正額を獲得するようにしてください。
民法改正について
- 本サイトの動画解説は、2020年3月31日までに発生した交通事故を前提としています。ライプニッツ係数、遅延損害金などに改正があります。
- 民法改正により、2020年4月1日以降は、損害賠償請求権の消滅時効のうち、人身損害については、3年ではなく、5年となります。
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