交通事故の死亡事故・後遺障害被害者の質問に回答
交通事故弁護士相談Q&A|みらい総合法律事務所

自動車事故に遭った会社役員です。逸失利益の質問です。(示談交渉中・後遺障害等級8級)

2013年07月16日

教えてください。

私は会社役員をしています。昨年自動車事故に遭い、すでに治療も終わってただいま示談交渉中です。

保険会社から示談金が出されたのですが、どうにも納得がいきません。

というのは、私は、自賠責から後遺障害等級8級が出ているので、後遺症の慰謝料と逸失利益があるはずなのですが、保険会社からは逸失利益は0円だと主張されています。

理由としては、サラリーマンと違い、会社のオーナー兼役員は、労働しているのではなく、働かなくても配当を受けられるので、逸失利益はない、ということです。

会社のオーナーとは言っても、私の会社は零細企業で私がいなければ売上もあがりません。

私の主張は、間違っているでしょうか。

弁護士からの回答

後遺症による逸失利益とは、交通事故によって後遺障害が残らなければ(事故前と同様に働けていれば)その後の就労可能な期間において得ることができたであろう利益を意味します。

この逸失利益は、一般的には、①基礎収入(事故前年の現実収入額)×②労働能力喪失率×③労働能力喪失期間(一般的には67歳まで)で算出されますが、Pさんのように会社役員をされている方の場合には、①基礎収入の点で逸失利益が問題になることが多いです。

以下、説明します。

まず、会社役員が受け取る報酬は、純粋な役員報酬と従業員としての給与部分に分けることができます。

このうち、従業員としての給与部分が労務の対価であれば、当該部分が①基礎収入となることにさほど問題はありません。

これに対し、問題なのは役員報酬です。

そもそも、①基礎収入は、労務の対価部分に限るものとされています。

しかし、役員報酬には、役員として実際に稼働していることに対する労務対価部分だけでなく、稼働していなくても得ることができる利益配当部分も含まれていることがあります。

そして、労務対価部分については、①基礎収入と認められるとしても、利益配当部分については、①基礎収入と認められません。

そのため、逸失利益の算定において、役員報酬のうち労務対価部分はそもそもあるのか、あったとしてその額はいくらなのかということが問題になるのです。

もっとも、この労務対価部分の金額について、実際のところ明確に算定することは困難です。

賃金センサスの平均賃金を参考にしつつ、会社の規模や、役員の職務内容、報酬額、他の役員や従業員との職務内容や報酬額の違い等を総合的に考慮して、労務提供の対価部分を算出することになるでしょう。

実際に裁判例でも、役員報酬の基礎収入額は、個別具体的な事情を踏まえて判断されています。

具体的な金額については上記事情を詳細に検討する必要がありますが、零細企業のオーナー兼役員で、Pさんがいなければ売上もあがらないとのことですので、役員報酬には労務対価部分が含まれているといえ、少なくとも逸失利益が0ということはないと考えます。

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