36歳のサラリーマン、男性です。
8ヵ月前に交通事故に遭い、脊髄損傷で入院していましたが、下半身不随で症状固定と主治医から言われました。調べてみると、被害者が後遺障害等級認定を受けるには、「事前認定」と「被害者請求」というものがあることを知りました。
正直なところ、個人的な借金があり現実的に生活が厳しい状況なのですが、そうした被害者は「被害者請求」すべきなのでしょうか?
また、「事前認定」と「被害者請求」のメリットとデメリットを教えてください。
自賠責における後遺障害等級を取得するには、保険会社から請求する「事前認定」と被害者から請求する被害者請求の二つの方法があります。
まず、被害者請求を行った場合のメリットとしては、
①示談成立前に等級に応じた保険金を受領することができる
②自賠責保険会社へ提出した資料を自ら把握することができる
③訴訟提起時に裁判所に納める費用が安くなる
④被害者の過失が大きいときには自賠責保険金の方が高くなることがある
の4点が上げられます。
①被害者請求を行った場合には、示談の成立前に認定された後遺障害等級に応じて保険金(別表第1第1級:4,000万円~別表第2第14級:75万円)を受領することができますので、解決前に経済的な余裕が生まれ、腰を据えて保険会社との交渉を行うことができます。
次に、②被害者請求を行った場合には、任意保険会社を通さずに手続を進めることになりますので、手続に必要な全ての書類を確認することができます。
これにより、適正な後遺障害等級が認定されるのに必要な資料の提出漏れもなくなりますし、任意保険会社の顧問医の意見書が添付されて不利に判断されることもなくなります。
また、③被害者請求を行って保険金を受領した場合には、受領した額を既払金として控除して訴訟提起を行いますので、請求額に応じて高額となる裁判所に納める費用(印紙代)が節約できます。
そして、④自賠責保険金は、被害者に重大な過失がない場合(被害者の過失が7割未満の場合)には受領できる保険金が減額されることはありませんので、被害者の過失が大きいような場合には、自賠責保険金の方が加害者から賠償を受けることが出来る金額より高くなる場合があります。
一方、保険会社から請求される事前認定による場合のメリットとしては、
①保険会社が資料を収集するので被害者が行う手続が少ない
②訴訟提起をして判決で認められる遅延損害金が多くなる
の2点が上げられます。
まず、①保険会社が主体的に資料を収集して自賠責保険会社に提出されますので、被害者が行わなければならない手続はほとんどありません。
次に、②訴訟提起がされて判決となると、交通事故の日から損害額に対する遅延損害金(5%)についても支払いを受けることができます。
以上のとおり、被害者請求と事前認定にはそれぞれメリットがありますが、資料収集等の時間があるのであれば被害者請求をすることをおすすめいたします。
もっとも、脊髄損傷のような重度の後遺障害を残す事案の場合には、解決に至るまで長期化することもあります。
個人的な借金があり現実的に生活が厳しい状況ですと、こちらに不利な金額での和解をしてしまう方もいらっしゃいますので、被害者請求をした上で生活をある程度安定をさせてから、加害者と交渉又は裁判を行うという方が良いかもしれません。