70歳の父親が交通事故に遭い、高次脳機能障害という障害を負ってしまい、後遺障害等級1級に認定されました。
父はほぼ寝たきりの状態になり、介護が必要となってしまいました。
父は年金暮らしで、今後の介護費用なども心配です。
母も高齢ですし、子供たちだけで介護を行うことも難しいので、ヘルパーを頼んだり、施設等へ入居することも考えているのですが、その費用も損害賠償金として相手から支払ってもらうことはできるのでしょうか?
交通事故により後遺障害等級1級1号のように重度の後遺障害が認定された場合には、将来の介護費用が認められることが多いです。
将来介護には、①近親者による介護を前提とする場合、②職業介護人を前提とする場合とがあり、どちらの場合によるかによって認められる賠償金にも差異が生じてきます。
①近親者による将来介護を前提とする場合には、原則として1日につき8000円、②職業介護人や施設による介護を前提とする場合には、原則として実費全額(通常は1日8000円よりも高額なことが多い)が認定されます。
以上のように、職業介護人や施設による介護の方が賠償額が高額になることが多いため、将来介護費を認定する際に、職業介護人や施設を前提とする金額を認定するか否かについては、職業介護人や施設による介護の蓋然性の有無により判断されます。
具体的には、①被害者の要介護状態(後遺障害の内容・程度、被害者の状態・生活状況、必要とされる介護内容)、②現在に至るまでの介護態勢、③被害者と同居する近親者の有無及びその身体的な介護能力(年齢、体格、体調等)、④被害者と同居する近親者の就労の有無、就労の意向、就労準備状況、就労の実績などが判断要素として考慮されています。
上記要素のうち、職業介護人の蓋然性を認めた事例については、後遺障害の程度が重く、介護の負担が重い場合に、同居の近親者が高齢であるという事情や健康状態が必ずしも良くないという事情のような、介護の負担や近親者の身体的な介護能力の要素を重視されております。
また、同居の親族が、事故前は稼働していたけれども、事故によってこれを中断していたり、変則的な就労を余儀なくされているものの、今後は家計収入などのために稼働する必要があり、他に介護にあたる適当な近親者がいないという場合にも、職業介護人の蓋然性が認められる場合もあります。
なお、折衷的な案として、介護にあたることができる近親者がいる場合に、その者が67歳になるまでは、近親者による介護を前提として賠償額を算定し、それ以降は、職業介護人による介護を前提として賠償額を算定するという方法が採られることもあります。