15歳の息子の交通事故について質問があります。
部活の帰り路で、息子が無免許・飲酒運転の車にひかれました。左腕の手首、肘、肩の関節に機能障害を負い、中指など3本を切断しました。
スポーツ推薦での高校進学が決まっていたのですが、すべてが白紙となってしまいました。
若い青年の夢が奪われてしまったのです。相場の慰謝料では納得ができません。私の息子の場合、慰謝料は増額するでしょうか?
A)加害者が無免許、飲酒運転というのは極めて悪質な行為なので、慰謝料が相場より増額する事由となります。
また、事故の後遺障害により将来の夢が絶たれてしまったということで、この点も慰謝料増額事由となる可能性があります。
交通事故で傷害(ケガ)を負い、入院・通院をして治療を受けた場合、被害者の方は入通院慰謝料(傷害慰謝料)を受け取ることができます。
治療を続けたものの、医師から「症状固定」の診断を受ける場合があります。
症状固定とは、これ以上、治療を継続しても効果が出ない、完治の見込みがない状態です。
症状固定の診断後は、後遺症が残ってしまうことになります。
その場合、被害者の方はご自身の後遺障害等級認定の申請をする必要があります。
というのは、後遺障害等級の違いによって(もっとも重度の1級から順に14級まであります)慰謝料などの金額が変わってくるからです。
被害者の方の後遺障害等級が決まらないと、加害者側の任意保険会社も慰謝料や逸失利益などを合計した損害賠償金(場合によって示談金とも保険金ともいいます)を正確に算出できないので、被害者の方に金額の提示ができないのです。
交通事故の被害にあって、後遺障害が残ってしまった場合、被害者の精神的な苦痛・損害に対して支払われるのが「後遺障害慰謝料」です。
後遺障害慰謝料は、被害者の方の後遺障害等級が認定されると、その等級に応じた金額を受け取ることができます。
手の指を切断(欠損)した場合に認定される後遺障害等級は次のとおりです。
「3級5号」
後遺障害の内容 | 両手の手指の全部を失ったもの |
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自賠責保険金額 | 2219万円 |
労働能力喪失率 | 100% |
「6級8号」
後遺障害の内容 | 一手の五の手指又はおや指を含み四の手指を失ったもの |
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自賠責保険金額 | 1296万円 |
労働能力喪失率 | 67% |
「7級6号」
後遺障害の内容 | 一手のおや指を含み三の手指を失つたもの又はおや指以外の四の手指を失ったもの |
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自賠責保険金額 | 1051万円 |
労働能力喪失率 | 56% |
「8級3号」
後遺障害の内容 | 一手のおや指を含み二の手指を失ったもの又はおや指以外の三の手指を失ったもの |
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自賠責保険金額 | 819万円 |
労働能力喪失率 | 45% |
「9級12号」
後遺障害の内容 | 一手のおや指又はおや指以外の二の手指を失ったもの |
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自賠責保険金額 | 616万円 |
労働能力喪失率 | 35% |
「11級8号」
後遺障害の内容 | 一手のひとさし指、なか指又はくすり指を失ったもの |
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自賠責保険金額 | 331万円 |
労働能力喪失率 | 20% |
「12級9号」
後遺障害の内容 | 一手のこ指を失ったもの |
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自賠責保険金額 | 224万円 |
労働能力喪失率 | 14% |
「13級7号」
後遺障害の内容 | 一手のおや指の指骨の一部を失ったもの |
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自賠責保険金額 | 139万円 |
労働能力喪失率 | 9% |
「14級6号」
後遺障害の内容 | 一手のおや指以外の手指の指骨の一部を失ったもの |
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自賠責保険金額 | 75万円 |
労働能力喪失率 | 5% |
手の指の切断(欠損)では、親指とそれ以外の指で分けて判断されます。
後遺障害等級認定では、障害を負った指が利き手か、そうでないかは関係ありません。
慰謝料を計算する際には、次の3つの基準が使われますが、どの基準で算定するかによって金額が大きく変わってくることを覚えておいてください。
自賠責保険で定められているのが「自賠責基準」で、慰謝料はもっとも低くなります。
各損保会社が独自に設定しているのが「任意保険基準」で、非公表となっていますが、自賠責基準より少しだけ高い金額になるように設定されています。
過去の膨大な裁判例から導き出されているのが「弁護士(裁判)基準」で、金額がもっとも高くなります。
弁護士が被害者の方から依頼されて加害者側の任意保険会社と示談交渉をする際、また裁判の際にも用いるもので、被害者の方が受け取るべき正しい金額になります。
後遺障害慰謝料について、自賠責基準と弁護士(裁判)基準による相場金額をまとめました。
慰謝料は、弁護士(裁判)基準で計算して、加害者側に認めさせることが大切です。
なお、入通院慰謝料(傷害慰謝料)の計算方法については、こちらの記事を参考になさってください。
前述したように、慰謝料を増額させるには、交通事故の実務に精通した弁護士に依頼して、弁護士(裁判)基準で解決することが大切です。
それ以外にも、次のような事情がある場合は慰謝料が増額する可能性が高くなります。
質問者の方のお子さんの交通事故は、加害者が無免許・飲酒運転ということですから、加害者側の任意保険会社に対して、慰謝料の増額を主張していくべきです。
ただし、保険会社は営利法人のため、被害者の方への慰謝料など損害賠償金を低く見積もって提示してきます。
また、被害者の方が単独で交渉しても慰謝料増額に応じることは、まずありません。
慰謝料を相場より増額させるためには、裁判を起こさないといけないケースが多いです。
慰謝料でお困りの場合は一度、みらい総合法律事務所にご相談下さい。