従業員が会社の自動車で、業務中に交通事故を起こした場合、雇い主である会社には、使用者責任(民法715条)が発生すると考えられます。
また、会社には、自動車損害賠償保障法第3条の運行供用者責任も発生します。
運行供用者とは、「自己のために自動車を運行の用に供する者」のことで、自動車の使用についての支配権を有し、かつ、その使用により享受する利益が自己に帰属する者のことですが、従業員が業務中に交通事故を起こした場合、会社に、自動車の使用についての支配権及び利益の帰属が認められるので、会社が運行供用者に該当するからです。
よって、会社には、被害者に対し、損害を賠償する責任が生じます。
では、その支払った分を、従業員に求償することはできるでしょうか?
この点、最高裁昭和40年11月30日判決では、「使用者は、その事業の性格・規模・施設の状況、被用者の義務の内容、労働条件、勤務態度、加害行為の態様、加害行為の予防若しくは損失の分散についての使用者の配慮の程度その他諸般の事情に照らし、損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度において」被用者に求償することができる、として、損害賠償額全額の4分の1程度の額の求償を認めています。
したがって、全額を従業員に対して求償するのはなかなか難しいと思いますが、従業員が故意だった場合や、使用者に損害を負担させるのが酷な場合には、全額従業員に求償できる場合もあると思います。