歩道を歩いていたの母が車に衝突されて亡くなりました。
死亡事故から約3ヶ月経って、加害者の任意保険会社から金額の提示がありました。
突然のことです。加害者は葬儀にも来ませんし、謝罪の一つもありません。
もう思い出したくもないので、示談してしまおうかとも思いますが、金額に納得がいきません。
無料相談の弁護士に相談したところ、示談をしてしまうと、加害者の刑事処分が軽くなる、と言っていました。
そんなことがあるのでしょうか。
また、示談の金額が妥当かどうかは、どうやって判断すればよいのでしょうか。
まず、示談と加害者の刑事処分の関係ですが、確かに、示談が成立した場合、情状の一事情となりますので、加害者の刑事処分が軽くなることがあります。
したがって、加害者への厳罰を望むのであれば、刑事裁判が確定するまでは、示談を行わない方が良いでしょう。
示談金の妥当性ですが、死亡事案の場合、損害項目のうち、金額が大きいのは、①葬儀費用、②死亡慰謝料、③逸失利益となります。
その他の治療費や、遺族の駆け付け費用等は実費となります。
まず、①葬儀費用についてですが、一般的には150万円までとなっています。
実際にかかった費用が150万円以下であれば、その実費となりますし、150万円を超えた場合でも150万円までとなります。
もっとも、被害者の社会的地位等から150万円を超えることが妥当といえる場合は、150万円を超えて認められることもあります。
次に、②死亡慰謝料ですが、母親の場合の目安の金額は2400万円前後とされています。
ただし高齢者の場合は、2000万円~2200万円ほどになることもあります。
事故態様の悪質性(居眠り、無謀運転、酒気帯び運転など)や、事故後の加害者の対応(ひき逃げ、謝罪を一切しない等)の事情により、増額されます。
そして③逸失利益ですが、働きに出ている兼業主婦の場合、仕事での収入と、家事労働を金銭評価した場合の金額とを比べて、高い方を基礎に請求することになります。
家事労働を金銭評価した場合、一般に355万9000円と評価されます(亡くなった年度によって多少変わってきます)。
これは、賃金センサスという、女性の賃金の平均をとったもののうち、全学歴・全年齢の平均をとったものの額です。
なお、年齢とともに労働能力は衰えてくるのが一般ですので、被害者が高齢である場合、上記金額より多少減額される場合もあります。
もし、家事労働を金銭評価した場合の上記355万9000円より、お母様の仕事での年収ほうが高い場合は同年収を基礎に逸失利益を算定します。
なお、お母様が一人暮らしで、仕事もしていなかった場合には、後述のように年金の逸失利益の有無のみ検討することになります。
仮に、家事労働を基礎に算定するとして、あと何年働く予定であったかが問題となります。
人は一般的に67歳までもしくは平均余命の半数の年数のうち長いほうの期間働けると河岸得られています。
なお、ライプニッツ係数という特殊な係数乗じることになります(これは、何年も先に手にするはずの利益を、現時点で一度に手にすることから、年5%ほどの運用が可能であり、その分減じるという考え方に基づきます)。
そして、年355万9000円の収入を得たとしても、その一部は生活費として費消されることから、生活費を控除することになります。
女性の場合、この生活費控除率は30%とされています。
以上より、家事労働に関する逸失利益は
355万9000円×(就労可能年数に対応するライプニッツ係数)×(1-0.3)
で算定されることになります。
その他にもお母様が年金を得ていた場合、年金の逸失利益が
(年金額)×(平均余命に対応するライプニッツ係数)×(1-0.3)
で算定されることになります。
ただ、生活費控除率は生活状況等によって上下します。
このように、示談金の算定には様々な要素が考慮され複雑ですので、一度は弁護士にご相談ください。