息子が交通事故に遭い、一時意識不明の状態でしたが、意識が戻り退院してから現在は通院している状況です。
まずは無事に家に帰ってこられたことを夫とよろこんだのですが、不安なことがあります。
以前の息子とは変わってしまったようなのです。35歳になりますが「子供がえり」したというか、突然笑い出したり、キレて言うことをきかなくなったり子供のようなのです。主治医の説明では高次脳機能障害が残るとのことですが、経過は順調で、もうすぐ治療は終了といいます。これから加害者への損害賠償請求が控えていますが、よきアドバイスをお願いします。
高次脳機能障害の典型的な症状には、多彩な認知障害、行動障害及び人格変化等があります。
認知障害とは、記憶・記銘力障害、注意・集中力障害、遂行機能障害などをいい、行動障害とは、周囲の状況に合わせた適切な行動ができない、複数のことを同時に処理できない、行動を抑制できない、危険を予測・察知して回避的行動をすることができないなどをいい、人格変化とは、受賞前には見られなかったような、自発性低下、衝動性、易怒性、幼稚性、自己中心性、病的嫉妬・ねたみ、強いこだわりなどをいいます。
ご子息が、突然笑い出したり、キレて言うことをきかなくなったり子供のようになったのは、高次脳機能障害の典型的な症状のあらわれといえます。
さて、今後の進め方ですが、医師からはもうすぐ治療は終了するとの説明を受けているようなので、症状固定の判断が医師からされましたら、後遺障害等級の認定手続きに移ることになります。
高次脳機能障害発症の有無の判断については、①事故後の意識障害の有無とその程度・長さ、②画像資料上で外傷後ほぼ3か月以内に完成するびまん性脳室拡大・脳萎縮所見、③交通事故等によって負った障害との因果関係の有無がポイントになります。
そのため、等級認定手続きの申請の際には、上記①~③の根拠となる資料として、後遺障害診断書のほかに、「頭部外傷後の意識障害についての所見」と題する書類、頭部の画像検査資料(MRI等)を提出する必要があります。
また、高次脳機能障害の症状の的確な把握のため、医師が記載する「精神症状についての具体的所見」やご家族が記載する「日常生活状況報告書」も提出する必要があります。
なお、「日常生活状況報告書」は、定型の質問事項(例:言いたい内容を相手に伝えることができるか等)があらかじめ用意されており、それに答えていくというものですが、もし、定型の質問事項にのっていないような症状がでているのであれば、別紙にご子息の症状を詳細に記載して添付するという方法をとることもできます。
なお、上記資料は保険会社に問い合わせれば取得することができます。
等級が認定されましたら、賠償額の算定が可能になり、加害者又は加害者の加入する任意保険会社と賠償金の額について交渉をすることになりますが、損害項目は多岐にわたし、これら損害項目を漏らさずに正当な賠償額を獲得することは専門家の判断を要する場面も多々あります。
そのため、後遺障害等級が認定されましたら、一度専門家にご相談することをお勧めいたします。