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遺言無効確認訴訟とは?納得いかない遺言を無効にする手続き

最終更新日 2024年 12月10日
監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所 代表社員 弁護士 谷原誠 監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所
代表社員 弁護士 谷原誠

遺言無効確認訴訟とは?納得いかない遺言を無効にする手続き

この記事を読むとわかること

 
被相続人が遺言書を残していたものの、その内容に納得できないというケースもあるでしょう。

基本的に遺言書がある場合は、遺言書の内容通りに相続が行われます。

しかし、遺言書に納得できない場合には、「遺言無効確認訴訟」によって遺言書の効力を見直すことができる場合があります

ここでは、遺言無効確認訴訟の手続きや、遺言が無効になるケースなどについて解説します。

遺言無効確認訴訟とは

遺言書があれば原則的に遺言書に従った相続が行われますが、遺言書に納得できない場合は遺言無効確認訴訟を提起することができます。

遺言無効確認訴訟とは、どのような手続きなのでしょうか?

遺言無効確認訴訟の目的

遺言無効確認訴訟とは、名前の通り、遺言の効力が無効であることを裁判所に確認してもらうための手続きです。

遺言無効確認訴訟により裁判所が遺言の効力は無効だと判断した場合は、遺言の効力が失われます。

この場合、遺産分割手続きを行うことになります。

一方で、遺言書の効力が有効だと判断された場合は、遺言書の効力が維持されます。

遺言有効確認訴訟との違い

遺言無効確認訴訟と対峙する「遺言有効確認訴訟」という訴訟も存在します。

遺言有効確認訴訟とは、遺言無効確認訴訟とは反対で遺言書の効力が有効であることを裁判所に確認してもらうための手続きです。

遺言書の効力についての争いになった場合に遺言有効確認訴訟の提起を行うケースもありますが、一般的には遺言無効確認訴訟が提起されるケースが多いです。

遺言書の無効が認められるケース

遺言無効確認訴訟を提起すれば、裁判所が遺言の効力について判断をします。

法的に遺言書の無効が認められる主なケースは、以下の通りです。

 

遺言能力が欠如している

遺言能力の欠如は、遺言書の無効を主張する理由として提起されることがもっとも多いです。

遺言書の有効性は遺言者の遺言能力が必要であり、遺言能力が欠如していれば遺言内容は無効になります。

例えば、被相続人が遺言書を作成した当時、認知症によって遺言書内容を正しく判断できる能力がなかった場合は、遺言能力が欠如していると認められます。

また、15歳未満の場合は遺言能力が認められないことが法律で定められています(民法第961条)。

遺言書の方式が法律に
反している

民法上では、遺言書は所定の方式に従って作成したものでなければ効力が認められません(民法第960条)。

このことを、「方式違背」といいます。

民法では公正証書・秘密証書・自筆証書の3種類が遺言書として認められますが、それぞれ作成方式が定められています。

  • ・遺言書本文がパソコンで作成されている
  • ・自筆証書遺言が本人の筆跡ではない
  • ・自筆証書遺言に日付の記載や押印がない

 
上記のような場合、方式違背として遺言書が無効になります。

 

遺言者の勘違いがあった

錯誤によって作成された遺言は、取り消すことができます(民法第95条)。

重大な事実を遺言者が勘違いしたまま遺言作成をした場合、遺言者の真意が遺言書には反映されていないことになります。

そのため、民法上では錯誤によって作成された遺言書の無効を主張することが認められています。

ただし、遺言者が亡くなっていると錯誤があったことを立証することは簡単ではありません。

詐欺・脅迫により遺言が
書かれている

詐欺や脅迫によって書かれた遺言書は無効になります(民法第96条)。

例えば、遺言者が他人に騙されて遺言書を作成した場合や、他人から暴行や脅迫を受けて遺言書を作成した場合が該当します。

詐欺や脅迫によって書かれた遺言書は、後から撤回することが民法第1022条で認められているため、遺言者が死亡するまで詐欺や脅迫によって書かれた遺言書が残っているケースは少ないといえます。

そのため、遺言者の死亡後に詐欺や脅迫による遺言であることを立証することは困難を要します。

共同で遺言書が作成されている

二人以上の人が共同で遺言書を作成することを「共同遺言」と呼び、法律上では認められていません(民法第975条)。

例えば、夫婦が同じ用紙に遺言書を書いていた場合、共同遺言であると判断されます。

一つの用紙に共同で遺言を記した場合、一方の遺言者の意向に干渉されてしまい、他方の遺言者の真意が示されない可能性があるため、共同遺言は認められないという考えです。

公序良俗に反する遺言内容

遺言書の内容が公序良俗に反している場合、その該当箇所もしくは遺言書自体が無効になります(民法第90条)。

公序良俗に違反する内容とは、社会常識に反していて、是認することができないとされるようなものです。

具体例としては、不倫関係にある愛人との交際維持を目的として遺贈するケースや、反社会的な事業への金銭を負担付遺贈するようなケースが挙げられます。

証人欠落

公正証書や秘密証書による遺言の場合、2人以上の証人が必要です(民法第969条1号)。

ただし、未成年者や推定相続人など一定の人物は証人になることができません(民法第974条)。

証人として認められない人物が証人になっていた場合、「2人以上の証人」という要件を満たしていないことになるため、遺言書は無効になります。

遺言書が偽造や変造されている

遺言書が偽造や変造されている場合は、遺言書内容が無効になります。

遺言書は遺言者本人が作成する必要があり、その他の人が作成したものは遺言書として認められません。

遺言書が部分的に変造されている場合は、その該当箇所が無効になります。

遺言書の偽造や変造は、遺言者が作成していないことを裏付ける証拠が必要です。

遺言の撤回の撤回

遺言は遺言者が撤回を希望すれば、撤回することができます(民法第1022条)。

しかし、その撤回を後日取り消したいと考えた場合、撤回された遺言の効力を復活させることは原則的に認められません(民法第1035条)。

そのため、撤回した遺言を復活させたい場合は、再度遺言を作成する必要があります。

ただし、錯誤や詐欺、脅迫など例外的に撤回した遺言の効力を復活させられるケースもあり、こうした場合は遺言無効確認訴訟を提起することになります。

 

遺言無効確認手続きの流れ

遺言無効確認手続きを行う場合は裁判所へ提起する必要があります。

訴訟を起こすまでの工程や、訴訟を起こすための手続きの流れを解説します。

証拠集めをする

遺言書の無効を主張するためには、主張を裏付けするための証拠が必要です。

主張内容によって有効な証拠は異なりますが、病院のカルテや筆跡鑑定など必要な証拠を集めましょう。

集めた証拠を基に、話し合いや訴訟を行うべきかどうか今後の方針を決定します。

相続人全員で話し合いをする

話し合いをせずに訴訟の手続きを行うこともできますが、まずは相続人全員と話し合いをして解決を目指すことが望ましいでしょう。

なぜならば、訴訟は解決までに時間と費用がかかるからです。

交渉は早期解決を目指せる可能性があるため、一般的には相続人全員で話し合いから始めます。

しかし、相続人間で話し合いをすれば感情的になってしまい、なかなか問題が解決しないことも多いです。

冷静に話し合いを進めるために、第三者である弁護士に依頼することも可能です。

家庭裁判所の調停へ申し立てる

話し合いで解決しない場合は、裁判所へ申立ての手続きを行います。

遺言無効確認訴訟をいきなり提起することは原則的に認められず、まずは家庭裁判所に調停を申し立てる必要があります

申立先は、相続人のうちの一人の住所地を管轄する家庭裁判所です。

調停では、調停委員が各相続人の主張を聞き、問題解決に向けて話し合いができるように間に入って調整をします。

裁判とは異なり、円満解決を目指すものです。

遺言無効確認訴訟を提起する

調停で解決しなかった場合は、遺言無効確認訴訟を提起します

また、相続者間での対立が激しく調停で解決が見込めないようなケースでは、調停を行わずにそのまま訴訟手続きの審理を行うケースもあります。

遺言無効確認訴訟は地方裁判所の取り扱いになり、管轄は被相続人の住所地を管轄する裁判所です。

遺言を有効だと主張する相続人や相続執行者などを被告として提起します。

遺言無効確認訴訟後は
どうなるのか?

遺言無効確認訴訟を提起すれば、遺言が無効かどうか裁判にて決まることになります。

訴訟の後はどのような流れになるのでしょうか?

無効が認められた場合

遺言の無効が確定した場合、遺言書の内容は無効になります。

そのため、相続人全員で遺産分割協議を行い、改めて遺産分割を行う必要があります。

遺産分割協議での話し合いが進まない場合は、家庭裁判所に調停を申立て、それでも解決しない場合は審判へ移行します

有効と判断された場合

遺言が有効だと判断されれば、被相続人の遺言に従って遺産が分割されます。

ただし、有効だと判断された場合でも以下の請求を行うことが可能です。

遺留分侵害額の請求

相続人には「遺留分」として最低限の保証額が設けられています(民法第1042条)。

遺言書の内容に偏りがあり、自分が相続できる遺留分を下回っている場合には、遺留分侵害額請求を行うことで、法律で定められている遺留分が認められます。

遺留分の割合は、以下の通りです。

相続人全体の
遺留分の割合
各相続人の遺留分の割合
配偶者子供両親兄弟姉妹
配偶者のみ1/21/2   
配偶者と
子供
1/21/41/4  
配偶者と
両親
1/21/3 1/6 
配偶者と
兄弟姉妹
1/21/2  なし
子供のみ1/2 1/2  
両親のみ1/3  1/3 
兄弟姉妹
のみ
なし   なし
全体の
遺留分
の割合
各相続人の遺留分の割合
配偶者子供両親兄弟
姉妹
相続人:配偶者のみ
1/21/2   
相続人:配偶者と子供
1/21/41/4  
相続人:配偶者と両親
1/21/3 1/6 
相続人:配偶者と兄弟姉妹
1/21/2  なし
相続人:子供のみ
1/2 1/2  
相続人:両親のみ
1/3  1/3 
相続人:兄弟姉妹のみ
なし   なし

 

ただし、遺留分の請求は、相続の開始および遺留分を侵害する贈与・遺贈を知ったときから1年過ぎると請求できなくなるので注意が必要です。

 

控訴審・上告審

遺言無効確認請求訴訟の判決に不服がある場合は、控訴することで上級裁版にて遺言書が無効かどうか判断を求めることができます。

控訴審の判決にも不服があれば、さらに上告審で判断を求めることが可能です。

遺言無効確認訴訟について知っておきたいこと

遺言無効確認訴訟の手続きについて解説しましたが、遺言無効確認訴訟について知っておくべきことが複数あります。

遺言無効確認訴訟へ進む前にまずは以下の点について理解しておきましょう。

遺言無効確認訴訟にかかる時間

遺言無効確認訴訟を提起した場合、裁判にて双方が主張を行い、最終的に和解や判決にて結果が出ることになります。

裁判をすれば確実に何らかの結果を出すことができるため、当事者同士では解決できなかった問題に終止符を打つことができます。

ただし、訴訟は1~1カ月半に一度のペースで審理が進むため、裁判が終わるまでには時間がかかります。

一般的には1年から1年半、早くて3カ月で裁判は終わるとされていますが、遺言無効確認訴訟のような相続関係の訴訟は審理が長期化しやすい傾向にあります。

そのため、2年や3年など長引く可能性があるでしょう。

さらに控訴審や上告審に進めば、解決までにより時間を要すことになります。

遺言無効確認訴訟の時効

遺言無効確認訴訟を起訴するための時効はありません。

ただし、遺言無効確認訴訟で敗訴した場合に遺留分侵害額請求を行う場合には、時効があります。

遺留分侵害額請求の時効は、相続開始及び遺留分を侵害する贈与または遺贈があったことを知ったときから1年間です。

そのため、遺言無効確認訴訟を提起する場合、相続開始から時間を空けず、できれば早急に提起することが望ましいでしょう。

遺言無効確認訴訟にかかる金額

遺言無効確認訴訟を提起する場合、主にかかる費用は「裁判費用」「弁護士費用」です。

裁判所へ納める費用は、訴訟を起こすことで原告が得られる利益を見積もった訴額によって異なります。

訴額ごとの手数料に関しては、裁判所のホームページで確認できます。

参考資料:裁判所「手数料」

また、遺言無効確認訴訟など訴訟は自分で手続きを進めるには知識や労力が必要になるため、非常に困難です。

一般的には弁護士に依頼することになりますが、弁護士費用は弁護士事務所ごとに異なります。

弁護士費用の一般的な相場は、着手金が数十万円、諸経費が数万円、成功報酬は獲得した利益の20%前後です。

弁護士に相談した際に見積もりをもらい、複数の弁護士事務所の費用を比較検討することを推奨します。

まとめ

遺言内容に納得できない場合、遺言無効確認訴訟で遺言が無効かどうか確認することができます。

ただし、遺言の無効を主張するには、無効を立証できる証拠が必要です。

証拠の収集や検討には専門的な知識が必要になるため、相続問題に精通した弁護士に相談することを推奨します

証拠の収集へのアドバイスだけではなく、他の相続人との交渉や裁判手続きなども任せることができるため、心身ともに心強い味方となるでしょう。

 
遺言の問題は一人で悩まず、まずは一度、気軽にご連絡いただければと思います。

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