法務局による保管制度(相続法改正)
自筆証書遺言は、作成に費用がかからず、他人に知られることもなく作成できる、という点でメリットがありましたが、自分で保管しなければならないため、なくしてしまったり、誰かに破棄・隠匿・変造されたり、などという危険がありました。
そこで、「法務局における遺言書の保管等に関する法律」が2018(平成30)年7月6日に成立し、同月13日に公布されました。
この法律(以下、「遺言書保管法」といいます)により、法務局による自筆証書遺言の保管制度を創設しました。
この制度は、次のような制度です。
相続開始前
(一)自筆証書遺言を作成した遺言者(本人に限る)は、遺言者の住所地・本籍地・所有不動産の所在地を管轄する法務局の遺言書保管官に遺言書を保管するよう申し出ることができます(法務大臣指定の法務局)。
この場合の遺言書は、封をしないものに限られます(遺言書保管法第4条)。
(二)遺言者生存中、遺言者は、遺言書を保管している法務局に対し、遺言書の返還を請求することができます。
ただし、遺言者自ら出頭しなければなりません(遺言書保管法第8条)
(三)法務局は、遺言書の原本を遺言書保管所の施設内で保管します(遺言書保管法第5条)。
また、保管する遺言書について、データで情報を保管します(遺言書保管法第7条)。
(四)遺言者は、いつでも保管された遺言書の閲覧を請求することができます。
ただし、自ら出頭することが必要です(遺言書保管法第6条)。
相続開始後
(一)遺言者死亡後、遺言書にかかる相続人および受遺者ならびに遺言執行者は、法務局に対し、遺言書を保管している法務局の名称等、あるいは、保管されていないときはその旨を証明する書面の交付を請求することができます(遺言書保管法第9条)。
この法務局は、法務大臣指定の法務局であれば、どの法務局でもよいとされています。
(二)遺言者死亡後、相続人等は、遺言書を保管している法務局に対し、遺言書の閲覧を請求し、または遺言書の画像情報等を証明した書面の交付を請求することができます(遺言書保管法第10条)。
この法務局は、法務大臣指定の法務局であれば、どの法務局でもよいとされています。
(三)(一)、(二)の閲覧あるいは書面交付をしたときは、法務局は、相続人等に対して、遺言書を保管している旨を通知しなければなりません。
(四)この制度により自筆証書遺言が法務局に保管されているときは、家庭裁判所における検認の手続は不要です。
遺言書保管法は、2020年7月10日から施行することになります。