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交通事故の裁判で得する方法

最終更新日 2024年 09月30日
監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所 代表社員 弁護士 谷原誠 監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所
代表社員 弁護士 谷原誠

裁判を起こすか起こさないかで、こんなに大きな違いが

交通事故でご家族を亡くされた時、あるいは、怪我をしてしまったときには、加害者にその損害を賠償してもらわなければなりません。

多くの場合、加害者は自動車保険の任意保険に入っているので、保険会社から賠償金を支払ってもらうことになるでしょう。

そして、その金額というのは、対人賠償保険の場合には定額ではありませんので、慰謝料などの賠償金がいくらなのか、を確定する手続きが必要になります。

まずは、加害者側の保険会社と示談交渉をすることになるでしょう。

話し合いで賠償金額を決めましょう、ということです。

しかし、話し合いで金額に折り合いがつかない場合もあります。

その場合には、裁判を起こして決着をつけなければいけません。

しかし、多くの人は、一生のうちで一度も裁判を経験しないものです。

裁判というと、大変なことではないか、という漠然とした不安があることでしょう。

また、費用についても心配です。

しかし、実は、裁判は、交通事故の被害者にとっては、それほど大変なことではありません。

それどころか、話し合いで解決するよりも得なこともあります。

そこで、これから、交通事故の被害者が裁判を起こすメリットやデメリットについて、説明していきたいと思います。

交通事故の示談交渉は、保険会社からの示談金の提示で始まることが多いです。

被害者の中には、「保険会社は適正な示談金を提示するのでは?」と思っている方も多いでしょう。

ところが、実際は違います。

実例をご紹介しましょう。

みらい総合法律事務所で実際に扱った事例があります。

47歳男性が交通事故に遭い、脊髄損傷、下肢切断という重傷を負いました。

治療が終了してから、自賠責の後遺障害等級を申請したところ、脊髄損傷で5級、下肢切断で5級の併合2級が認定されました。

その後、示談交渉を開始したところ、保険会社は被害者に対し、示談金として、52,695,937円を提示しました。

そこで、被害者は、みらい総合法律事務所に示談交渉を依頼しました。

しかし、弁護士と保険会社との交渉は決裂し、裁判となりました。

その結果、どうなったか。

最終的な解決金額は、1億4590万円です。

保険会社の提示額は、約5270万円ですから、裁判をすることで、約9300万円も増額したことになります。

逆に言うと、裁判を起こさずに示談をしていたら、被害者は、9300万円も損をしていたことになるのです。

この事例を知っているだけでも、裁判を起こすことで大きな得をすることがあることがわかるでしょう。

このように、保険会社は必ずしも適正な金額を提示してくるとは限りません。

そして、裁判をするかしないかで、得をしたり、損をしたり、ということがあるということを知っておいていただきたいと思います。

もちろん、交通事故の賠償金は、裁判をすれば必ず増額するとは限りません。

示談で解決した方が早いですし、裁判で争うとかえって損をしてしまうケースもあるでしょう。

しかし、その判断はとても難しいものがあります。

交通事故に精通した弁護士でも判断に悩むこともあるくらいです。

ところで、交通事故の示談交渉においては、最初に加害者側の任意保険会社が被害者に提示してくる金額は、通常の場合、裁判で認められる損害賠償金額よりも低額であることが多いという現実があります。

それは、保険会社も利益を出さなければならないからです。
被害者に高額の賠償金をどんどん気前よく払っていったら、保険会社は赤字になってしまいます。

保険会社は、利益を出すために、被害者に対して支払う示談金額を少なくおさえなければならないのです。

交通事故の被害に遭い、これまでの健康な生活を奪われたうえに、不当に低い損害賠償金しか得ることができないなど、許されるものではありません。

それでも、多くの人は「できれば裁判を起こしたくない」と考えるでしょう。

もしかしたら、裁判について、次のような疑問を感じているのかもしれません。

• 裁判にかかる時間と費用は?
• 裁判を起こすことは得なのか、損なのか?
• 裁判はどのように起こしたらいいのか、その手続は?
• 裁判はどのような流れで進むのか?
• 弁護士費用はどのくらい?

そこで、ここからは、裁判の手続きや流れ、費用などについて解説したいと思います。

交通事故の加害者に発生する3つの責任

まず、交通事故の加害者が負う責任から見ていきます。

交通事故を起こした加害者には、3つの法的責任が発生します。

• 刑事上の責任
• 民事上の責任
• 行政上の責任

この3つは、それぞれが別々に進行します。

交通事故の行政上の責任とは、免許の停止や取消などの行政処分のことであり、被害者が関与することはありません。

刑事上の責任では、信号無視やスピード違反、無免許運転などの違反をした場合は道路交通法違反、被害者にケガを負わせたり、死亡させた場合は、過失運転致死傷罪に問われます。

特に悪質な交通事故の場合は危険運転致死傷罪が適用されます。

最終的に加害者には、刑事罰として懲役刑や罰金刑、禁錮刑などが科せられることがあります。

刑事手続については、交通事故の後、まず警察の捜査が行われます。

警察官は事故現場の実況見分調書や供述調書を作成します。

ここで作成する実況見分調書は、民事の示談交渉や損害賠償の裁判の際に、過失割合を判断するための重要な資料となりますので、自分が経験した事実に基づき作成してもらうことがとても大切です。

警察官による誘導に乗らないよう気をつけましょう。

捜査が終わると、検事が起訴不起訴を判断し、起訴されると刑事裁判が始まっていきます。

民事上の責任とは法律上、自動車損害賠償保障法に基づく運行供用者責任や、民法に基づく不法行為責任、使用者責任などの損害賠償責任のことです。

損害賠償金の3つの決め方

交通事故における損害賠償金の決め方には、大きく次の3つがあります。

• 示談(紛争処理センターでの解決も含む)
• 調停
• 裁判

示談とは、加害者側の保険会社などと話し合って示談金額を決めることです。

示談交渉で慰謝料などの賠償金額に折り合いがついたら、加害者との間で示談書を交わして解決します。

保険会社所定の免責証書という書類に署名捺印をすることで示談成立とする場合もあります。

示談交渉が上手くいかない場合は、交通事故紛争処理センターなどの機関に仲介を依頼する場合もあります。

また、民事調停によって賠償金額を決めることもあります。

民事調停は判決ではなく、あくまで話し合いによる合意で解決を目指す手続です。

したがって、双方が合意しない限り、解決することができません。

示談交渉や民事調停で解決がつかない場合には、法的手続きにより民事訴訟の提起を行い、裁判に突入していくことになります。

裁判手続について

裁判の手続きや費用などについて見ていきましょう。

裁判は、まず初めに訴状を裁判所に提出します。

訴状を提出した日付から1~2ヵ月で第1回の口頭弁論期日が行われます。

裁判の期日は、通常1~1ヵ月半に1度の割合で行われていきます。

弁護士に依頼した場合は、弁護士が出廷することになりますので、被害者本人はほとんどの場合、裁判所に行く必要はありません。

証拠として、次のような書類を提出します。

• 警察が作成した実況見分調書
• 各種診断書
• 診療報酬明細書
• 被害者の事故前年度の収入証明書
• 後遺症が残ったときは、自賠責後遺障害等級認定書類
• 自賠責後遺障害診断書
• その他の書類

裁判にかかる日数ですが、半年から1年程度は覚悟した方がよいでしょう。

後遺症の程度なで激しく争われる場合には、2~3年かかることもあります。

通常、途中で裁判所による和解手続が行われます。

そこで合意ができれば和解で解決しますが、合意できないときは、判決に進んでいくことになります。

裁判にかかる費用は、印紙代や郵便切手代、弁護士費用などです。

印紙代は、相手に請求する金額(訴額)に応じて変わります。

• 訴額が100万円の場合  1万円
• 訴額が500万円の場合   3万円
• 訴額が1000万円の場合 5万円
• 訴額が3000万円の場合 11万円
• 訴額が5000万円の場合 17万円
• 訴額が1億円の場合 32万円

弁護士費用は、相談料や着手金、報酬金、実費、日当などとなりますが、金額は弁護士によって違いがあります。

通常、報酬金については最終的に獲得した金額の〇%というように設定されていることが多いと思いますが、弁護士に依頼する場合には、必ず事前に弁護士費用を確認し、契約書を作ってもらうようにしましょう。

また、依頼する前に、予想される獲得金額を確認することも忘れないでください。

「大丈夫。任せてください」と言って、予想金額を教えてくれない弁護士は要注意です。

交通事故に詳しくない可能性があります。

交通事故に詳しい弁護士であれば、ある程度の概算額を出してくれるはずです。

裁判での慰謝料増額事由

交通事故の損害賠償金というのは、治療費、休業損害、慰謝料など、各損害項目の合計金額として計算されます。

したがって、裁判で重要なことは、各損害項目を漏れなく、そして、できるだけ多くの項目や金額を記載して請求することです。

請求漏れがあると、裁判所は積極的に認めてはくれませんので、その分だけ被害者が損をしてしまうことになります。

交通事故に詳しくない弁護士が担当して、請求漏れがあったりすると、その部分は認めてもらえない、ということです。

たとえば、交通事故の慰謝料については、過去の裁判例の集積により、計算方法がだいたい決まっています。

死亡事故の場合、家族の中で、一家の支柱であれば2800万円、配偶者や母親であれば2500万円、それ以外の場合は2000万円~2500万円等です。

しかし、必ず相場の金額で判決が出るわけではありません。

事情によっては、慰謝料が増額される場合があります。

いわゆる慰謝料増額事由の問題です。

飲酒運転や無免許運転など、加害者に特に悪質性があったり、被害者側に特別の事情があるような場合には、裁判所は相場として決まっている慰謝料を増額してくれる場合があるのです。

しかし、交通事故の裁判の場合には、被害者側が慰謝料の増額を主張しないと、裁判所は勝手に慰謝料を増額してはくれないことに注意が必要です。

被害者側で慰謝料増額事由を見つけ、自分で主張していかないといけません。

その意味で、やはり交通事故の裁判は、交通事故に精通した弁護士に依頼する方がよいでしょう。

裁判上の和解

民事裁判では、ある程度進むと、裁判所から和解案が出され、和解のための話し合いがなされるのが通常です。

和解は、双方が合意すると和解成立といい、民事裁判は終わります。

民事裁判で和解するメリットとデメリットについては次のことがあげられます。

<メリット>
・早期に解決できる。
・ある程度、納得して和解することができる。

<デメリット>
・判決の方が金額が大きくなる場合ある。

和解するかどうかは、これらについてよく検討してから決定するのがよいと思います。
交通事故に精通した弁護士であれば、裁判の見通しもわかると思います。

弁護士費用を加害者に負担してもらう

実は、交通事故の裁判を起こすときには、損害賠償金の他に、追加で弁護士費用相当額を加算して請求することができることになっています。

通常、弁護士費用は損害賠償額の約10%です。

仮に、加害者に請求する損害賠償金額が1000万円だとしたら、弁護士費用は1000万円の10%で100万円となり、被害者は1100万円を請求することができます。

これは、裁判を起こすメリットと考えてよいでしょう。

弁護士費用は、示談では保険会社は通常認めてくれません。

民事裁判を起こすメリットは、まだあります。

裁判で判決が出た場合、事故発生日から遅延損害金というものがつきます。

事故発生から時間が経てば経つほど遅延損害金が膨らんでいきますので、この点も裁判のメリットといってよいでしょう。

この遅延損害金も、示談交渉では認めてくれないのが通常です。

裁判のメリット、デメリット

では、交通事故の被害者が裁判を起こすメリットとデメリットを簡単にまとめてみます。

裁判を起こすメリット
•裁判基準による適正な損害賠償金を受け取ることができる
•裁判をすると遅延損害金を受け取ることができる
•弁護士費用を加害者に負担させることができる
•事情によっては慰謝料が増額することがある

裁判を起こすデメリット
•判決までに時間がかかる
•裁判に出廷しなければならない可能性がある。

ただ、通常は、弁護士が代わりに裁判所に出廷しますので、被害者が一度も裁判所に行かずに裁判が終わることも多くあります。

したがって、裁判所への出廷は、たいしたデメリットではないでしょう。

以上、交通事故の被害者が裁判を起こすことが得なのか、損なのか、について説明しました。

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