交通事故を弁護士に相談するメリットとは?
目次
交通事故解決までのプロセス
まず、交通事故の被害に遭ったときに、どのようなプロセスで解決まで進んでいくのかについておおまかに説明します。
死亡事故についても、怪我の場合についても、まずは刑事事件が始まります。
交通事故があったときは、警察に通報しなければなりません。
怪我人がいる場合には、救助する必要もあります。
自動車事故を起こして怪我人が出た、ということは、たとえば、過失運転致死傷罪という罪が成立している可能性があるので、刑事手続がスタートするわけです。
刑事事件というのは、交通事故を起こした加害者に対し、国家としてどのような刑罰を科すかという問題です。
2つ目の手続きは、行政事件です。
行政事件というのは、加害者の運転免許証に関して、どのような行政処分が下るかというようなことです。
ここは、被害者は関与しない手続となります。
3つめは、民事事件です。
民事事件というのは、いわゆる示談交渉を通して解決するプロセスのことで、損害賠償問題です。
通常は刑事事件が先行し、刑事事件が終わってから民事の示談交渉が始まります。
中には、すぐに民事の示談交渉をし、示談してしまう人もいます。
しかし、それは要注意です。
というのは、刑事事件が進行している最中に、民事の示談が成立してしまうと、慰謝料の支払いにより、被害者の精神的苦痛がある程度緩和された、ということで刑事処分が軽くなってしまう可能性があるためです。
死亡事故の場合には、死亡によって損害額が確定しますので、すぐに示談交渉可能です。
通常は、刑事事件が終了した後に開始します。
そして、示談交渉により解決するか、裁判をするか、ということになります。
怪我をした場合には、治療しなければなりませんので、治療が終わってから示談交渉が始まります。
しかし、治療しても怪我が治りきらない場合があります。
これが後遺症の問題です。
後遺症が残った場合には、一生その後遺症と付き合っていかなければならないため、後遺症部分についても補償してもらわないといけない、ということになります。
そして、示談交渉をし、示談が成立すれば解決ですが、示談が成立しない場合には、裁判などを起こして、最終的な支払い額を確定していくことになります。
以上が、交通事故解決までのおおまかなプロセスです。
交通事故の被害者は誰に相談すべきか?
このように、交通事故解決までには、刑事事件や民事事件という様々な手続があるわけですが、交通事故は一生に一度遭うか遭わないか、という稀な事態です。
当然、被害者は法的な知識を持っていないことが通常です。
そこで、誰かに相談することが必要になってきますが、誰に相談すればよいでしょうか。
まず身近な人で交通事故の被害に遭った人は、どうでしょうか。
相談をするのはよいですが、答えをそのまま信じるのは、とてもリスクが高いです。
たとえば、相談した知人が「保険会社はいい金額出してくれないよ」とか「弁護士に相談した方がいいよ」とか、おおざっぱな回答をしてくれればいいのですが、「この金額は低いよ。もっと慰謝料は取れるはずだよ」などという具体的な回答をした場合には、まず信じない方がよいでしょう。
というのは、交通事故の損害賠償というのは、とても奥が深い世界です。
弁護士でも得意不得意があり、司法試験に合格し、ずっと法律の仕事に携わっている弁護士であっても、交通事故をあまり扱っていなければ間違えてしまう可能性がある世界だからです。
交通事故を処理するためには、医学的な知識、自賠責後遺障害等級認定基準に関する知識、保険に関する知識があったうえで法律的知識が必要となります。
交通事故を日常的に扱っている弁護士でも、日々勉強し続けています。
したがって、一度や二度交通事故の被害に遭って勉強したくらいでは、他人の交通事故に関する正確なアドバイスなどできるはずがないのです。
では、加害者側の保険会社は、どうでしょうか。
加害者側の保険会社は、治療費や休業補償を払ってくれ、担当者によっては、とても親身になり、アドバイスをくれる人もいます。
ついつい信用して、色々相談したくなることがあります。
しかし、これも要注意。
なぜ交通事故を保険会社に相談すべきではないのでしょうか?
それは、加害者側の保険会社と被害者とは、利害が明確に反するからです。
保険会社は営利企業です。
利益を上げなければなりません。
しかも、なるべく多くの利益を上げなければなりません。
保険会社の役員は、保険会社の利益を上げることを第一に考えるでしょ。
そして、保険会社の利益を増やすためには、収入を上げるとともに、支払を少なくしなければならない、ということに注意が必要です。
交通事故の被害者に支払う賠償金も支払です。
この支払を少なくすれば、保険会社の利益が増えることになります。
当然ですね。
ですから、保険会社は構造的に、賠償金を下げようと努力することになり、被害者とは明確に利害が反するのです。
では、交通事故の被害者は自分の保険会社に相談すべきでしょうか。
自分が契約している保険会社の代理店だったら、親身になってくれそうです。
しかし、被害者側の「人身傷害保険特約」などで支払いを受けている場合には、さきほどの加害者側の保険会社との関係と同じく、保険金をたくさん払うと保険会社が損をしてしまうので、被害者への支払を減らすことによって保険会社の利益を確保しようとし、利害が反してしまいます。
また、被害者側の保険会社は、加害者側の保険会社と、被害者の被った損害について交渉することはできません。
弁護士法72条に違反するからです。
弁護士でない者は、交通事故の示談交渉などの代理人として相手方と交渉することはできないことになっています。
弁護士のみが代理人になれるということになります。
また、保険会社代理店は保険のプロであり、損害賠償のプロではありません。
正確な賠償額を計算することは難しいでしょう。
保険契約をしている窓口は、ほとんどの人は保険代理店だと思いますが。
では、「慰謝料額はいくらになるか」とか「損害賠償はどうするか」などの相談先としては、誰に相談すれば、よいのでしょうか。
それは、やはり弁護士です。
交通事故の被害者が弁護士に相談するメリット
交通事故の被害者が弁護士に相談するメリットの1つめは、被害者と弁護士は利害が一致する、ということです。
先ほど、保険会社は自社の利益を優先すると言いました。
では、弁護士はどうでしょうか。
弁護士報酬は被害者が支払うわけですが、多くの場合、弁護士費用の計算は、賠償金の金額に応じて計算されます。
賠償金が多ければ弁護士費用も多くなり、賠償金が少なければ弁護士費用も少なくなる、ということです。
つまり、報酬の計算方法を通して、被害者と弁護士の利害が一致するようになっているのです。
ですから、弁護士は全力で被害者の賠償金を増やそうと努力するともいえるでしょう。
ただし、建前では、弁護士法第1条にいう「基本的人権の擁護」と「社会正義の実現」のために弁護士は頑張っています。
交通事故の被害者が弁護士に相談するメリットの2つめは、弁護士は刑事事件に適切にアドバイスしてくれることです。
交通事故での加害者の刑事事件では、一定の場合には被害者が参加できることになっています。
「被害者参加制度」というものです。
刑事事件で一定のものについては、交通事故の被害者(死亡事故の場合には遺族)が、刑事事件に参加し、質問し、意見を述べることができます。
友人、知人はこれに参加できませんし、保険会社に相談してもアドバイスはしてくれません。
刑事事件に適切に助言してくれるのは、法律の専門家としての弁護士しかいないでしょう。
交通事故を弁護士に相談するメリットの3つめは、交通事故における3つの計算基準に理由があります。
交通事故の損害計算には、「自賠責基準」「任意保険基準」「弁護士基準(裁判基準)」という3つの基準があります。
弁護士基準(裁判基準)が、法律上、適正な金額であり、自賠責基準や任意保険基準というのは、それよりも低い金額です。
そして、保険会社は弁護士基準(裁判基準)ではなく、低い基準である自賠責基準や任意保険基準で示談金の提示をしてくることが多いのです。
ですから、被害者は保険会社から示談金が提示されたら、それを適正な金額だと信じることなく、一度は弁護士に相談したほうがよいのです。
つまり、適正な金額を知ることができる、というのが弁護士に相談する3つめのメリットです。
そして、保険会社が提示した金額が不適正な金額の場合、被害者が頑張って、引き続き交渉しても、なかなか保険会社が示談金を増額してくれない、という事態が起こります。
これは、なぜでしょうか。
それは、弁護士ではなく被害者が交渉している限り、「まだ裁判は起こされないだろう」と保険会社は思っているからです。
裁判を起こされなければ、弁護士基準(裁判基準)で賠償金を払う必要はない、ということになります。
つまり、弁護士基準(裁判基準)まで増額する必要がないのです。
ところが、弁護士が代理人の場合は、どうでしょうか。
示談金が適正金額でない場合には、弁護士は示談をしてくれません。
その場合、どうなるかというと、裁判を起こされることになります。
裁判になると、最終的に弁護士基準によって強制的に賠償金を取られてしまいます。
また、裁判になった場合には、保険会社側もお金を払って弁護士に依頼しなければなりません。
つまり、裁判になると、高額の弁護士基準で賠償金を支払う他に、保険会社側の弁護士報酬も払わなければならず、支出が増えて利益が減ってしまうのです。
さらに言えば、交通事故の裁判では、判決までいくと慰謝料などの損害賠償金に加えて、「弁護士費用相当額」や「遅延損害金」の支払まで命じられてしまいます。
弁護士が出てきた場合、弁護士基準で示談するより、裁判をしたうえでの支払の方が、支払額が大きくなってしまうのです。
保険会社は利益を増やすことを目指す、と言いましたが、この結果は支出が増えているので、反対の結果になってしまいます。
そうであれば、弁護士が出てきたときには、増額して示談して終わりにするという選択をするのは、保険会社としては当然の選択というわけです。
これが、被害者がいくら交渉しても増額しないのに、弁護士が出てくると増額することになる理由です。
したがって、保険会社から慰謝料などの示談金が提示されたときには、弁護士に法律相談し、適正な金額ではないというときには、弁護士に依頼して示談交渉してもらい、増額を目指した方がよい、ということになるのです。
さらに、弁護士に示談交渉を依頼するメリットとして大きなものに、交通事故を弁護士に頼むと、保険会社とのやり取りから解放される、というメリットがあります。
交通事故の被害者は、後遺症の痛みに耐えながら、あるいは死亡事故の場合には、遺族は悲しみに耐えながら、保険会社と賠償金の交渉をしなければなりません。
これは、大きな精神的苦痛だと思います。
しかも、相手は交通事故における損害賠償の交渉のプロです。
知識では到底太刀打ちできません。
やはり、プロにはプロをぶつけるのが一番です。
交通事故の示談交渉を弁護士に依頼すれば、このような保険会社との交渉は全て弁護士が行ってくれるので、被害者は解放されます。
そして、不適正な金額のときは、裁判をし、適正な金額を勝ち取ってくれます。
さらに、保険会社から、「休業補償はこれ以降認められない」「その治療は不要じゃないか?」など、様々な嫌なことを言われることがあります。
これも、かなりの精神的苦痛です。
「交通事故の被害者が、なぜこんなことまで言われないといけないのか?」
などと感じてしまいます。
私たち弁護士への依頼者の中には、保険会社からの煩わしいやり取りから解放されたいがために弁護士に依頼するという人が少なからずいます。
これも、交通事故を弁護士に依頼するメリットといえるでしょう。
交通事故の弁護士費用を保険会社が払ってくれることもある
交通事故を弁護士に相談したり、依頼したりするときに心配なのが「弁護士費用」です。
「弁護士費用は高いんじゃないか?」ということです。
この点については、加害者ではなく被害者ご自身がかけている自動車の任意保険を調べてみましょう。
その中に、「弁護士費用特約」がついていれば、最大300万円までの弁護士費用を保険会社が支払ってくれる可能性があります。
交通事故に遭った被害者本人の任意保険だけではなく、同居の親族や、未婚の場合は別居の両親がかけている任意保険の「弁護士費用特約」が使える場合もありますので要チェックです。
この「弁護士費用特約」を使えば、弁護士費用の心配はなくなりますので、弁護士に依頼した方がよいといえるでしょう。
交通事故を相談依頼する弁護士を選ぶときの注意
さて、交通事故を弁護士に相談依頼するメリットをご理解いただけたと思いますが、では、どの弁護士を選んだらよいのか、という問題があります。
弁護士にも得意不得意があります。
そして、交通事故はとても奥が深い世界です。
法律を知っているだけでは対処できません。
怪我に対する適切な検査がなされていなければ、正しい後遺障害等級は認定されません。
したがって、医学的知識が必要です。
後遺障害等級認定が間違っていることもあります。
したがって、後遺障害等級認定の判定基準を熟知していなければなりません。
また、加害者に対する請求と被害者の任意保険のどちらに先に請求したらよいかは、保険の知識がなければなりません。
弁護士なら誰でもよい、というわけではないのです。
ですから、可能な限り、交通事故に精通した弁護士に依頼することをおすすめします。
そこで、交通事故に精通しているかどうかの判断基準ですが、やはり、専門家が利用する学術的な書物を執筆しているかどうかで専門性を判断するのがよいでしょう。
たとえば、みらい総合法律事務所では、
「交通事故訴訟における高次脳機能障害と損害賠償実務」(ぎょうせい)
「交通事故訴訟における脊髄損傷と損害賠償実務」(ぎょうせい)
「交通事故訴訟における典型後遺障害と損害賠償実務」(ぎょうせい)
というような裁判所や弁護士が利用する専門書を執筆しています。
専門書を出版するには、実績がないと法律関係の出版社は出させてくれません。
実績のある弁護士が書いた本でないと、弁護士や裁判所などの法律専門家が購入してくれないためです。
インターネットで調べて、このような専門書を書いている事務所に相談依頼するのがひとつの選び方、ということになるのではないかと思います。
なお、みらい総合法律事務所では、後遺症と死亡事故を取扱分野に絞って、専門性を高めています。
該当する方は、ご相談ください。