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遺産相続を弁護士に相談する12のメリットと注意点

最終更新日 2020年 06月02日
監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所 代表社員 弁護士 谷原誠 監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所
代表社員 弁護士 谷原誠

遺産相続は、一生のうちに何度も経験するものではありません。

したがって、いざ親族が亡くなったときには、葬儀等の他、遺産相続問題について、色々とわからないことが発生します。

・遺言書が見つかったけど、遺言の内容どおりに遺産を分けるには、どうしたら?
・遺言書の内容と違う分け方をしてもいいの?
・遺言書がない場合には、どうやって遺産相続したらいい?
・相続人どうしで話し合いがつかないときは?
・相続税って何を、どうすればいいの?
・遺産分割調停のプロセス、時間、費用は?
・弁護士や税理士にはいつ、何を相談すればいいの?

まだまだ他にもわからないことがあると思います。

そこで、ここでは、遺産相続全体の流れを見ながら、弁護士に相談するメリットや注意点、いつの時点で何を相談すればいいのか、などについて説明していきたいと思います。

遺産相続の流れ

相続は、被相続人の死亡によって開始します。

法律の定めでは、相続人の間で話し合いが行われなくても、すでに人の死亡によって始まっている、という考え方なのです。

とはいえ、現実問題として、法律に従って、きちんと財産を分けたり、移転したりしなくては、自分の財産にすることはできません。

では、遺産相続は、どのような流れで進んでいくのでしょうか。

まず、遺産相続は、「遺言書」があるかどうかによって大きく異なってきます。そこで、まずは遺言書を探します。

遺言書が発見された場合には、家庭裁判所で開封・検認の手続をしなければなりません(公正証書遺言以外)。

遺言があれば、その遺言のとおりの効力が発生し、相続人の話し合いなしに遺産相続を進めていくことになります。

遺言書がない場合には、「遺産分割」という手続が必要になります。

そして、相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヶ月以内に相続税の申告が必要な人は、相続の申告をすることになります。

相続税の納付までの手続は、以下のようになります。

手続きの流れ

相続開始(被相続人の死亡)
 ↓
遺言書の有無【有】 → 家庭裁判所の検認 → 遺言の執行
 ↓
【無】
 ↓
相続人の調査 → 相続放棄・限定承認(3ヶ月以内)
 ↓
4ヶ月以内  → 準確定申告
 ↓
遺産の調査・評価・鑑定
 ↓
遺産分割協議 → 調停・審判
 ↓
相続税の申告書の作成 → 納税資金準備 → 延納・物納の検討
 ↓
相続税の申告・納付(10ヶ月以内)

 

それでは、具体的に、遺言がある場合とない場合に分けて、遺産相続の流れや弁護士への相談の仕方について解説していきます。

遺言がある場合の弁護士への相談

遺言書がある場合には、遺産相続は、遺言書の内容どおりに進んでいきます。

相続人同士で遺産分割について話し合いをする必要はありません。

そこで、まずは遺言書があるかどうかを探すことになります。

平成元年(1989年)以降に作成された公正証書遺言は、最寄りの公証役場に行けば検索することができます。

自筆で書いた自筆証書遺言は、被相続人がどこかにしまってあるはずなので、貸金庫や家の中などを探さないといけません。

自筆証書遺言について、法務局が保管してくれる制度が、2020年7月10日に始まります。

それ以降、この制度を利用している場合は、法務局でも検索する必要があります。

遺言が見つかった場合は、遺言の内容どおりに遺産分割が進んでいくのが原則ですが、場合によっては遺言が無効になることがあります。

その場合には、遺言は効力を生じません。

遺言が無効になる場合とは、たとえば、遺言が有効になるための法律の要件(色々な要件があります)を備えていない場合、遺言書の日付けを見ると、被相続人が認知症になった後の日付けであり、意思能力を喪失したと判断される場合、などです。

このような場合には遺言が無効になり、相続人同士で遺産分割をする必要が出てきます。

この遺言が有効か、無効かについては、法律的な判断が必要であり、法律の素人では判断が難しい場合が多いと思いますので、遺言が見つかった時には、弁護士に相談することをおすすめします。

遺言が無効の場合でも、その遺言書で遺産をもらえると記載してある相続人は、遺言が有効だと主張するはずです。

その場合は裁判で決着をつけないといけませんので、弁護士への相談は必須となるでしょう。

また、遺言が有効な場合でも不動産の登記を移転する必要があったり、株の名義を書き換える必要があったり、など、何らかの手続が必要になる場合があります。

その場合には、「遺言執行人」が手続を行うことになります。この手続も弁護士に相談しながら行った方がよいでしょう。

以上が、遺言がある場合に弁護士に相談するメリットということになります。

【遺言を弁護士に相談するメリットまとめ】
・遺言が有効かどうか弁護士に判断してもらえる
・遺言が無効な場合の解決を弁護士に頼める
・弁護士に遺言執行人に就任してもらえる

相続するかどうかの判断と弁護士への相談

遺産相続というと、プラスの財産を分けるものだというイメージがありますが、必ずしもそうとは限りません。

多額の借金があって、プラスの財産よりもマイナスの財産の方が多い、という場合もあるでしょう。

相続は、プラスの財産だけではなく、借金も引き継ぎます

したがって、債務超過の場合に相続をしてしまうと、借金を背負い込んでしまうことになります。

そのような場合には、むしろ遺産相続をしたくない、という場合もあるでしょう。

あるいは、プラスの財産の方が多くても、被相続人の財産は引き継ぎたくない、という場合もあるでしょう。

そのような場合の手続が法律で定められています。

まず、プラスの財産が多いので自分も遺産を相続したい、という場合は「単純承認」をすることになります。

この場合は遺言書のとおり財産を承継し、あるいは遺産分割により遺産を分けることになります。

当然、負債があれば、それも引き継ぐことになります。

次に、一切財産は要らない、という場合は「相続放棄」の手続を行うことになります。

相続放棄は、家庭裁判所に申請して行うことになります。

相続放棄の手続は、相続開始を知ったときから3ヶ月以内にしなければなりません。

しかし、3ヶ月以内に財産や負債の状況がわからないこともあります。

その場合には、その期間を延長してもらう手続もあります。

相続の承認・放棄の期間の伸長申立は、年間にどの程度利用されているでしょうか。

司法統計によると、以下のようになります。

【出典】裁判所司法統計
http://www.courts.go.jp/app/sihotokei_jp/search

プラスの資産とマイナスの資産のどちらが多いかわからない場合に、プラスの資産の限度でマイナスの資産を整理したい、という場合もあるでしょう。

その場合には、「限定承認」の手続を行います。

限定承認の手続も家庭裁判所を通して行います。

限定承認の年間受理件数は、以下のようになっています。

【出典】裁判所司法統計
http://www.courts.go.jp/app/sihotokei_jp/search

このような遺産相続をするかどうか、負債についてどのように整理することができるのか、被相続人の会社の負債を被相続人が連帯保証していた場合の手続、家庭裁判所に対する相続放棄や限定承認の手続、など、法的に難しい問題がたくさんあります。

そのような場合には、一度弁護士に相談し、失敗をしないようにしたいものです。

弁護士に相談しないで自分で判断をしてしまい、多額の借金を負ってしまった、ということのないようにしてください。

【相続するかどうかを弁護士に相談するメリット】
・負債が多い場合、どうすればいいか、解決方法を弁護士に相談できる

遺産分割の手続と弁護士への相談

【動画解説】遺産分割を簡単に解説します。

遺言がない場合には、相続人全員で遺産分割をしなければなりません。

遺産分割をするには、相続人を確定し、遺産を確定して話し合いや調停などで遺産を分割することになります。

相続人の確定というと、簡単だと思うかもしれませんが、相続人が一人でも欠けた遺産分割協議は無効になってしまいますので、確実に相続人を調査する必要があります。

そして、実は、婚外子がいる事案が意外にあることに注意が必要です。

したがって、遺産分割をする前には、被相続人の戸籍を出生まで遡って、他に相続人がいないかどうか、調査することになります。

戸籍の読み方も難しい場合があるので、相続人調査についても弁護士に依頼した方が確実だと言えるでしょう。

次に遺産の確定ですが、どの範囲のものが遺産になるのか、判断しなければなりません。

預金一つとっても、本当は被相続人の財産のはずが他人名義になっていた場合はどうか、債権、債務はどうなるのか、生命保険は遺産か、保証債務は相続の対象になるか、など、難しい判断が必要ですので、迷った場合は一度弁護士に相談するのがよいでしょう。

相続人が確定し、遺産の範囲が決まったら、相続人全員で遺産分割をすることになります。

遺産分割の方法としては、「協議分割」、「調停分割」、「審判分割」の3種類があります。

協議分割は、相続人全員で話し合って、遺産分割協議書を作成して遺産を分けることです。

法律上どのように分けるかなど弁護士の助言を受けながら遺産分割協議を進めていくのがよいでしょう。

遺産分割の仕方によって、配偶者控除など税務上の優遇措置もありますので、弁護士の他、税理士にもあわせて相談することをおすすめします。

調停分割は、家庭裁判所の調停手続を利用して遺産分割を行う方法です。

裁判所の調停委員に間に入ってもらい、裁判所で話をしながら解決していく方法です。

年間で、どの程度の調停が受理されているか、司法統計からグラフにしてみました。

【出典】裁判所ホームページ司法統計より
http://www.courts.go.jp/app/sihotokei_jp/search

調停になるということは相続人同士で円満に解決できなかった、という場合なので、相続人相互の主張が食い違っている場合が多いです。

そのような場合には、ある程度法的な主張や証拠提出等が必要となる場合が多いので、弁護士に依頼して進めていった方がよいでしょう。

審判分割は、家庭裁判所の判断により、強制的に分割を行う手続です。

調停でも解決ができなかった紛争案件となりますので、やはり弁護士に依頼して進めていった方がよいでしょう。

【遺産分割を弁護士に相談するメリットまとめ】
・弁護士に相続人調査を依頼できる
・遺産の範囲を弁護士に判断してもらえる
・遺産分割について弁護士に相談できる
・遺産分割協議を弁護士に依頼して解決してもらえる
・弁護士に遺産分割調停の代理人を頼み、自分に有利に解決してもらえる
・弁護士に遺産分割審判の代理人を頼み、自分に有利に解決してもらえる

遺留分を請求するときは

遺言があり、その遺言によると、相続財産は全て自分以外の人に相続させるよう書いてあった、というような場合があります。

たとえば、被相続人の配偶者は死亡しており、相続人として長男と長女がいるケースで、長女が高齢者の被相続人の面倒をずっと看ていたような場合、被相続人が遺言を書いて、財産を全て長女に相続させる、というようなことがあります。

こうなると、長男は一切の遺産を相続できない、ということになるわけですが、民法では、このような場合に、長男が一定の財産を確保できる制度を設けています。

それが「遺留分」制度です。

遺留分は、配偶者、子、直系尊属に権利がありますが、兄弟姉妹にはありません

遺留分権利者である長男は、長女に対し、相続した一定割合の財産を請求することができます。これを「遺留分減殺請求権」といいます。

どの割合の権利を有しているか、についてですが、この場合には、長男は長女に対し、遺産のうち、4分の1の割合について遺留分を有していることになります。

具体的な事例については、弁護士に相談して確認するようにしてください。

遺留分は当然にもらえるものではなく、遺留分権利者が遺贈や贈与を受けた人に対して請求していかなければなりません。

遺留分減殺請求権を行使した証拠を残すために、内容証明郵便で行った方がよいでしょう。

内容証明郵便の書き方については、弁護士に相談することをおすすめします。

相続法改正により2019年7月1日以降は、遺留分減殺請求権は、「遺留分侵害額請求権」と名称が変更になり、権利の内容も異なっていますので、弁護士に相談しながら遺留分を請求していくことをおすすめします。

【遺留分を弁護士に相談するメリットまとめ】
・遺留分の解決の仕方を弁護士に相談できる
・弁護士に遺留分減殺請求の代理人を頼み、自分に有利に解決してもらえる

遺産相続を弁護士に相談するメリット

これまで、相続について弁護士に相談するメリットを解説してきましたが、ここでまとめておきたいと思います。

相続を弁護士に相談する12のメリット

本記事で解説した、相続を弁護士に相談するメリットの主な内容は、以下のとおりです。

・遺言が有効かどうか弁護士に判断してもらえる

・遺言が無効な場合の解決を弁護士に頼める

・弁護士に遺言執行人に就任してもらえる

・負債が多い場合、どうすればいいか、解決方法を弁護士に相談できる

・弁護士に相続人調査を依頼できる

・遺産の範囲を弁護士に判断してもらえる

・遺産分割について弁護士に相談できる

・遺産分割協議を弁護士に依頼して解決してもらえる

・弁護士に遺産分割調停の代理人を頼み、自分に有利に解決してもらえる

・弁護士に遺産分割審判の代理人を頼み、自分に有利に解決してもらえる

・遺留分の解決の仕方を弁護士に相談できる

・弁護士に遺留分減殺請求の代理人を頼み、自分に有利に解決してもらえる

遺産相続を弁護士に相談するときの3つの注意点

ここまで、遺産相続を弁護士に相談するメリットを解説してきましたが、相談する時の注意点も合わせてご紹介します。

(1)相談と依頼は違う

まず、遺産相続で不安があるときは、弁護士に相談することをおすすめしますが、相談と依頼は違う、ということを認識しておきましょう。

つまり、相談しても、依頼しなくてよい、ということです。

まずは、自分の遺産相続がどうなるのか、弁護士に相談することから始めましょう。

(2)弁護士費用をよく確認する

次に、相談する場合の相談料、依頼する場合の弁護士費用をよく確認することです。

弁護士は無料で仕事をしてくれるわけではありません。

弁護士費用でトラブルにならないように、相談する前、依頼する前に必ず弁護士費用を確認しましょう。

そして、依頼するときには、弁護士費用について、契約書に明記してもらうようにしましょう。

(3)相続に精通した弁護士に相談・依頼する

医者に専門があるように、弁護士にも得意・不得意があります。

可能であれば、相続に精通した弁護士に相談・依頼した方がよいでしょう。

相続に精通した弁護士を知らない場合には、インターネット等で探すことになると思いますが、相続に特化したサイトを作っていたり、相続に関する書籍を出版しているような場合には、相続について、ある程度精通していると判断してよいのではないかと思います。

以上が、遺産相続を弁護士に相談するメリットとデメリットとなります。

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