死因贈与契約とは、どんな契約か?
死因贈与契約とは?
遺言は、遺言者の一方的意思表示により作成するものであり、契約ではありません。
契約は、複数当事者による意思の合致が必要です。
実は、自分の死後の財産処分は、遺言書以外の方法でもすることができます。
それが、「死因贈与契約」というものです。
贈与者の死亡によって、贈与者の財産を無償で受贈者に与える契約を死因贈与契約といいます。
贈与者の死亡後の財産を処分するという意味で遺言と同趣旨の法律行為であることから、遺贈に関する規定が準用されています。
まず、贈与者は、いつでも死因贈与の全部または一部を撤回することができます(最高裁昭和57年4月30日判決、民集36巻4号763頁)。
ただし、負担付死因贈与契約で受贈者が負担の履行をした場合には、撤回はできないとした判例があります(最高裁昭和57年4月30日判決、民法百選Ⅲ第85)。
相続税法では、死因贈与は遺贈とみなされます(相続税法第1条の3一)。
不動産を相続によって取得させる場合と死因贈与によって取得させる場合で所有権移転登記にかかる登録免許税の税率が異なります。
相続によって取得させる場合の税率は、1000分4であり(登録免許税法第9条、別表第一の一(二)イ)、死因贈与の場合の税率は、1000分の20となります(同ハ)。
また、不動産取得税は、相続(包括遺贈及び被相続人から相続人に対してなされた遺贈を含む。)による取得の場合は課税されませんが、死因贈与の場合は課税されることになります(地方税法第73条の7一)。
贈与税は、贈与による財産の取得のときに納税義務が発生します(国税通則法第15条2項5号)。
民法では、贈与は贈与契約の成立によって効力を生じます。
しかし、書面によらない贈与は、履行が終了するまで取り消し(撤回)ができる(民法第550条)ことから、「贈与により財産を取得したとき」とは、書面によらない贈与の場合においては「贈与の履行の終ったとき」であるとされています(東京高裁昭和53年12月20日判決、税務訴訟資料103号800頁)。
なお、死因贈与契約の事例ではありませんが、不動産を贈与する旨の公正証書を作成した場合に、公正証書は将来の不動産贈与を明らかにした文書にすぎないとして、書面によらない贈与であり、不動産の引き渡し又は所有権移転登記がなされたときにその履行があったと判断した裁判例があります(名古屋高裁平成10年12月25日、租税百選第6版76)。
注意が必要です。