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属人的株式

最終更新日 2019年 11月14日
監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所 代表社員 弁護士 谷原誠 監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所
代表社員 弁護士 谷原誠

属人的株式というのは、株主平等原則の例外です。

非公開会社において、株主ごとに異なる取り扱いをする旨を定款で定めるもので、以下の権利について認められます。

・剰余金の配当を受ける権利

・残余財産の分配を受ける権利

・議決権

今回は、議決権について、解説します。

議決権について、属人的株式の定めをすると、株主ごとに異なる議決権を定めることができるようになります。

原則は、「1株1議決権」です。

しかし、属人的株式では、たとえば、次のような定めをすることができます。

「Aは、1株5議決権、Bは、1株1議決権」

「1人1議決権」

「Aは議決権を10分の1に縮減する」

つまり、議決権を株式数の割合ではなく、「A」という個人ごとに定めることができる、ということです。

属人的株式は、事業承継でも使えます。

遺留分の関係で、どうしても、後継者以外の者にも株式を相続させないといけないような場合に、無議決権化する、という方法もありますが、この属人的株式にする、という方法もあります。

たとえば、後継者に一部株式を相続させた上で、「Aは議決権を1株につき10議決権を有する」などと定めることにし、3分の2の議決権を確保する、などの方法です。

この定めをするには、株主総会の「特殊の決議」が必要となります。

総株主の半分以上、かつ、総株主の議決権の4分の3以上の賛成です。

また、反対株主には株式買取請求権が与えられます。

なお、属人的株式の定めを無効とした東京地裁立川支部平成25年9月25日判決(金融・商事判例1518号54頁)がありますので、行き過ぎた定めには注意が必要です。

この事案は、経営陣と対立した特定株主の議決権および配当受領権を100分の1に縮減する定款変更決議を無効としたものです。

裁判所は、次のように判示しています。

会社法109条2項の属人的定めの制度についても株主平等原則の趣旨による規制が及ぶと解するのが相当であり、同制度を利用して行う定款変更が、具体的な強行規定に形式的に違反する場合はもとより、差別的取扱いが合理的な理由に基づかず、その目的において正当性を欠いている場合や、特定の株主の基本的な権利を実質的に奪うものであるなど、当該株主に対する差別的取扱いが手段の必要性や相当性を欠くような場合には、そのような定款変更をする旨の株主総会決議は、株主平等原則の趣旨に違反するものとして無効となるというべきであるところ、株主総会の議決権および剰余金の配当に関する株主ごとの異なる規定を新設する内容の定款変更を行う旨の株主総会決議は、その目的の正当性および手段の相当性が認められず、株主平等原則の趣旨に著しく反する上、その株主平等原則違反の内容、程度に照らすと、多数決の濫用により少数株主である原告の株主としての基本的権利を実質的に奪うものであり、公序良俗にも違反するものであって、決議の内容自体が法令に違反するものとして無効である。

ポイントは、

・目的の正当性

・手段の相当性

ということになります。

弁護士に相談しながら進めることをおすすめします。

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