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遺留分減殺請求権(遺留分侵害額請求権)の時効

最終更新日 2019年 09月25日
監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所 代表社員 弁護士 谷原誠 監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所
代表社員 弁護士 谷原誠

遺留分の権利の時効とは

遺留分減殺請求権(遺留分侵害額請求権)には、消滅時効制度が定められています。

消滅時効というのは、ある一定の期間を経過してしまうと、権利自体が消滅してしまう、という制度です。

つまり、消滅時効が完成すると、遺留分権利者は、遺贈等を受けた者に対し、遺留分の請求ができなくなってしまう、ということになります。

したがって、遺留分権利者であれば、時効にならないように遺留分の権利を請求しなければなりませんし、遺留分を請求された場合には、すでに消滅時効が完成しないかどうか、確認する必要がある、ということです。

ただし、消滅時効は、時効の主張をしない以上、その効果は生じません。

時効期間が経過していても、受贈者等が、特に消滅時効の主張をしなければ、遺留分減殺請求権(遺留分侵害額請求権)の効力が生じることになります。

遺留分減殺請求権(遺留分侵害額請求権)は、遺留分権利者が、相続の開始及び減殺すべき贈与または遺贈があったことを知ったときから1年間行使しないときは、時効によって消滅します。

また、相続の開始及び減殺すべき贈与または遺贈があったことを知らなかったとしても、相続開始から10年を経過したときは、同じく消滅することになります(民法第1042条)。

いつから時効を起算するか

ここで、「相続の開始及び減殺すべき贈与または遺贈があったことを知ったとき」というのは、単にそれらを知るだけでなく、それが遺留分を侵害し、減殺しうべきものであることを知ったときとされています。

こう考える理由として、最高裁昭和57年11月12日判決は、「民法が遺留分減殺請求権につき特別の短期消滅時効を規定した趣旨に鑑みれば、遺留分権利者が訴訟上無効の主張をしさえすれば、それが根拠のない言いがかりにすぎない場合であっても時効は進行を始めないとするのは相当でないから、被相続人の財産のほとんど全部が贈与されていて遺留分権利者が右事実を認識しているという場合においては、無効の主張について、一応、事実上及び法律上の根拠があって、遺留分権利者が右無効を信じているため遺留分減殺請求権を行使しなかったことがもっともと首肯しうる特段の事情が認められない限り、右贈与が減殺することのできるものであることを知っていたものと推認するのが相当というべきである。」としています。

遺留分減殺請求権(遺留分侵害額請求権)の消滅時効は、請求権行使の時効なので、消滅する前に遺留分減殺請求権を行使すれば物権的効果が生じ、その結果生じる返還請求権は期限経過により時効消滅するものではありません。

なお、10年の期間については、除斥期間と解されています。

このように、遺留分の権利については、消滅時効や除斥期間がありますので、遺留分権利者としては、権利が消滅する前に、権利を行使する必要があります。

遺留分権利者が権利を行使すれば、以上に説明した時効は適用されません。

遺留分の権利行使方法

それでは、権利を行使するには、どのような行為をしたら、良いでしょうか。

確実なのは、「内容証明郵便」により、贈与を受けた者等に対して、遺留分の権利を行使する旨を通知することです。

過去の判例では、遺留分の権利を行使する明確な意思表示をしていない場合でも遺留分減殺請求権の行使にあたる、とした事例もあります。

最高裁平成10年6月11日判決は、全財産が一部の相続人に遺贈され、減殺請求権を行使する者が遺贈の効力を争わない場合には、遺産の分配を求めるには遺留分減殺によるしかないので、特段の事情がない限り、遺産分割協議の申し入れに減殺の意思表示が含まれている、としました。

しかし、あくまで事例判断ですので、遺留分減殺の意思表示ではない、とされてしまうと、権利が消滅してしまいます。

そこで、やはり、法的に正確に意思表示をしなければいけません。

法的にきちんと通知しないといけないので、弁護士に依頼して、内容証明郵便を送ってもらう方がよいでしょう。

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