相続・遺産分割の弁護士費用の相場|誰が払うのか?
相続・遺産分割を弁護士に依頼した場合、一般的に①相談料、②着手金、③報酬金、④実費、がかかります。
弁護士費用は、法律で決められているわけではなく、個々の弁護士毎に決定します。
相続・遺産分割は、法律問題で、複雑な問題なので、知識のない個人が問題解決にあたることは簡単ではありあません。
そのため、弁護士に依頼すればスムーズな解決が期待できますが、心配なのは、弁護士費用です。
弁護士費用はどれくらいが相場になるのでしょうか?
また、相続・遺産分割を弁護士に依頼した場合、費用は一体誰が支払うのかという点も気になる方が多いと思います。
ここでは、相続・遺産分割の弁護士費用の相場や、弁護士費用の負担者について解説します。
相続・遺産分割の弁護士費用の内訳と相場
相続・遺産分割問題を弁護士に依頼すれば、費用が発生します。
弁護士に依頼することで発生する費用の金額は法律で決められているわけではなく、各法律事務所が自由に決めています。
そのため、依頼する法律事務所や依頼内容、遺産額によって費用は大きく異なります。
弁護士費用は相談料・着手金・報酬金など項目が分けられるため、まずは内訳とそれぞれの項目の費用相場からみていきましょう。
相談料
弁護士に法律問題を相談する際に発生する費用が「相談料」です。
相談料は30分5000円が相場ですが、初回は無料で相談をしている事務所も多いです。
また、相談後に依頼すれば、相談料が無料になるようなケースもあります。
着手金
「着手金」は、弁護士が正式に依頼を受けた際に発生する費用です。
最終的な結果に関わらず発生する費用であり、原則として依頼を取り消しても返金されることはありません。
着手金の相場は20~30万円といわれており、依頼内容や遺産額によって金額が上がるケースもあります。
現在では廃止されている旧報酬規程を参考にして着手金を決めている事務所も多いため、次の表も参考にしてください。
経済的利益の額 | 着手金(経済的利益に対する割合) |
300万円以下 | 8% |
300万円~3000万円 | 5%+9万円 |
3000万円~3億円 | 3%+69万円 |
3億円超え | 2%+369万円 |
上記のように利率で着手金の金額を算出する事務所もありますが、「〇〇円」と固定額が設定されている場合もあります。
報酬金
「報酬金」は、いわゆる「成功報酬」と呼ばれるものです。
問題解決が成功した場合に発生する費用で、結果に伴い金額が異なります。
経済的利益に応じて報酬金の利率は決められています。
つまり、経済的利益が得られなければ、基本的に報酬金も0円になることが多いです。
報酬金の利率も着手金同様に事務所ごとに自由に決められますが、廃止された旧報酬規程を参考にしている事務所も多いです。
そのため、以下の表を参考に報酬金の相場を確認してください。
経済的利益の額 | 報酬金(利率) |
300万円以下 | 16% |
300万円~3000万円 | 10%+18万円 |
3000万円~3億円 | 6%+138万円 |
3億円超え | 4%+738万円 |
尚、遺産分割で争いのない場合に関しては、相続分の時価3分の1の額を経済的利益として計算することがあります。
実費
実費とは、裁判所への申立費用や郵便切手代、交通費など諸経費を指します。
実費の相場はケースバイケースですが、数千円~数万円ほどが相場です。
相続・遺産分割協議の場合であれば、1~3万円ほどになると予想されます。
ただし、遠方の裁判所で調停を行うようなケースでは交通費の負担が大きくなります。
日当
日当とは、弁護士が出張した際に発生する費用です。
遠方への出張がなければ発生しませんが、1日出張すれば3~5万円程度が日当として請求されます。
遠方の裁判所への出頭や、実地調査で遠方へ出向く際などに発生します。
手数料
書面作成や必要書類の収集代行など事務的な手続きによって発生する費用です。
相続・遺産分割では、次のような手数料が発生します。
・法定相続情報の取得(3~10万円)
・財産目録の作成(5~10万円)
・遺産分割協議書の作成(5~10万円)
・自筆証書遺言の遺言書情報証明書の取得(5~10万円)
こうした手数料は基本報酬として着手金に含まれているケースもあるため、相談時に確認しましょう。
依頼内容別の弁護士費用相場
弁護士費用の内訳と相場について紹介しましたが、弁護士費用は依頼内容によって異なります。
ここからは、相続・遺産分割における依頼内容別の弁護士費用の相場をご紹介します。
遺産分割の代理交渉・調停などを依頼した場合
遺産分割協議は、相続・遺産問題の中でも相続人同士でトラブルがもっとも起こりやすいといえます。
遺産分割の代理交渉や調停、裁判を依頼した場合、弁護士費用は経済的利益額によって異なります。
例えば、4500万円の遺産に対して3人の相続人がいて3等分されることになり、自分の相続分は1500万円だった場合の弁護士費用を計算してみましょう。
・着手金 1500万円×1/3×5%+9万円=34万円
・報酬金 1500万円×1/3×10%+18万円=68万円
・合計 34万円+68万円+実費など
・着手金 1500万円×5%+9万円=84万円
・報酬金 1500万円×10%+18万円=168万円
・合計 84万円+168万円+実費など
争いがない場合は経済的利益の金額が3分の1の額として適応されることがあるため、争いがある場合とない場合では大きく弁護士費用が異なります。
また、調停や裁判に発展する場合、書類作成などの手数料や弁護士が裁判所へ出頭するための日当などが発生するため、より費用は高額になると考えられます。
・遺産分割はどのようにするか
遺留分侵害額請求を行う場合
遺留分侵害額請求とは、本来であれば受け取れる遺産の権利を侵害された場合に行われる申立です。
遺留分侵害額請求の弁護士費用は、依頼主が得る経済的利益によって異なります。
計算方法は、遺産分割の際と同様に経済的利益の金額に応じて算出します。
尚、内容証明郵便の作成・送付のみであれば、3~5万円が相場です。
・簡単に遺留分を請求する方法【5ステップ】
遺留分侵害額請求をされた場合
他の相続人より遺留分侵害額請求をされた被請求者側の場合も、弁護士に依頼して問題解決を目指すことがあります。
この場合も弁護士費用は依頼主が得られる経済的利益によって計算されますが、請求する側に比べると費用設定が高めになっているケースが多いです。
そして経済的利益は、「相手側の請求額から減額した金額」が基準になります。
・遺留分を請求されたら、こう対処する!
相続放棄・限定承認を依頼した場合
遺産の相続を放棄するための相続放棄や、遺産の一部のみを相続するための限定承認の申立てを弁護士に依頼することがあります。
相続放棄の申立てでは、着手金+書類作成や代理手数料などを含めて10万円ほどが相場です。
複数の相続人が相続放棄する場合は、人数に応じて報酬が加算されます。
また、限定承認の申立は、必要書類や手続きの手順が状況によって異なるため、相場も10~50万円と幅広くなっています。
・相続の承認・限定承認・放棄とは?
遺言書作成を依頼した場合
遺言書の作成を弁護士に依頼した場合の弁護士費用の相場は、10~20万円です。
ただし、相続財産の価額が多い場合や、複雑なケースの場合には、弁護士費用が相場よりも高額になる可能性があります。
また、公正証書遺言書を作成する場合には、公正役場に支払う手数料として公正証書作成費用が別途必要です。
・遺産相続で遺言書の正しい書き方と間違った書き方
遺言執行を依頼した場合
弁護士に遺言執行人を依頼した場合、遺言内容を実現するために弁護士はさまざまな手続きを行います。
不動産の名義変更や、相続登記など、手続き内容が千差万別になるため、弁護士費用もケースバイケースになります。
30~40万円は最低相場として考えられますが、高額になれば100万円を超えることもあります。
相続・遺産分割の弁護士費用は誰が払うのか?
弁護士費用は原則として、弁護士に依頼した本人が支払うことになります。
なぜならば、依頼を受けた弁護士は依頼人が有利になるように問題解決を目指すからです。
しかし、依頼人が複数人いる場合には、複数人で支払うことも可能です。
相続・遺産分割問題において、弁護士費用は誰が払うのか依頼内容ごとに解説していきます。
遺産分割協議は依頼者が払う
遺産分割協議の代理人を弁護士に依頼した場合は、依頼者が弁護士費用を負担します。
例えば、遺産分割割合で他の相続人と対立していて弁護士に依頼をした場合、依頼した本人の負担になります。
一方で、トラブルは発生していないものの遺産分割の助言が欲しいという目的で相続人全員が依頼した場合には、相続人同士で話し合って費用負担を決定します。
遺産分割協議の場合、報酬金は相続財産を引き継いだ後に請求が行われます。
遺留分侵害額請求は申立人が払う
遺留分侵害額請求を弁護士へ依頼する場合は、申立人になる人が弁護士費用を負担します。
例えば、その他の相続人がそれぞれ弁護士に依頼している場合、遺留分侵害額請求は個別で依頼する弁護士に費用を支払います。
着手金は契約時に支払いますが、報酬金は遺留分侵害額請求が成功した後に請求が行われます。
相続放棄・限定承認は申立人が払う
相続放棄や限定承認を弁護士へ依頼する場合、依頼者である申立人が費用を負担します。
ただし、複数人で同じ弁護士へ相続放棄や限定承認の依頼を行う場合には、依頼者間で費用負担を話し合います。
相続人の中の一人が全ての相続財産を引き継ぐような場合には、遺産を引き継ぐ相続人が弁護士費用を負担するようなケースもあります。
遺言書作成は遺言者が払う
遺言書作成を弁護士に依頼する場合、遺言書を作成する本人が費用を負担します。
遺言書には自筆証書遺言と公正証書遺言があり、公正証書遺言の場合の手数料も遺言者の負担になります。
遺言書作成の場合は、弁護士と契約をする際に弁護士費用を支払うことが一般的です。
遺言執行費用は相続人全員で払う
遺言者が死亡後に遺言執行人に弁護士を指名している場合、弁護士が遺言書の内容に沿って相続手続きを進めます。
遺言執行者となる弁護士への費用は、相続財産から支払われることが民法第1021条に規定されています。
つまり、相続人全員で負担するような形になります。
相続財産から弁護士へ遺言執行費用を支払い、その残りを相続人に分配することが一般的です。
トラブルになった場合も弁護士費用は自己負担
相続・遺産分割では相続人間でトラブルになってしまうこともあります。
不当な扱いや言いがかりをされた場合でも、弁護士費用は依頼主の自己負担です。
トラブルの原因を作った相手に弁護士費用を請求したいと考えるかもしれませんが、弁護士費用の請求は認められません。
弁護士費用を支払うことが難しい場合の対処法
相続・遺産分割問題は複雑なので、知識がなければ解決が難しいケースも多いです。
相続人同士のトラブルなどに発展し、なかなか問題が解決しないというケースもあります。
弁護士へ依頼すれば相続・遺産分割問題のスムーズな解決が期待できますが、弁護士費用を払うことが難しいというケースもあるでしょう。
弁護士費用に不安がある場合や、支払いが難しい場合には、次の対処法をお試しください。
まずは無料相談で相談する
弁護士への初回相談は無料の法律事務所も多いため、まずは無料相談を利用して相談してみましょう。
無料相談で相談をすれば、問題解決への助言を得られます。
また、複数の事務所で見積もりを出してもらえば、料金を比較して検討することが可能です。
ただし、依頼する弁護士によって大きく結果が異なることがあります。
弁護士費用だけで判断すると、かえって損をする結果となることもありますので、ご注意ください。
コミュニケーション力や信頼性、知識経験、弁護士との相性なども含めて依頼する弁護士事務所を検討すべきです。
分割払いの相談をする
弁護士費用の一括払いが難しい場合には、分割払いが対応可能か相談してみましょう。
相続・遺産分割問題は解決までに数カ月かかるようケースもあるため、法律事務所によっては分割払いに応じてくれるような場合もあります。
分割払いの相談は、初回相談の際に尋ねてみてください。
法テラスを利用する
弁護士費用の支払いが難しい場合には、法テラスの民事法律扶助を利用するという選択肢もあります。
民事法律扶助を利用すれば、低い金額で弁護士へ依頼できます。
着手金は月々1万円程度の分割払いに抑えられることができ、費用負担は大幅に軽減されます。
ただし、民事法律扶助は一定水準の収入や資産を超えていれば利用できません。
また、依頼する法律事務所も自由に選べない点がデメリットになります。
まとめ
相続・遺産分割問題を弁護士に依頼すれば、遺産額や問題の複雑さに応じて最低数十万円の弁護士費用がかかります。
場合によっては数百万円になることもあるでしょう。
こうした弁護士費用は基本的には依頼主が支払う必要があるため、依頼前には見積もりを出してもらうようにすべきです。
また、実際に依頼する時には、必ず契約書を作成してもらい、いくら弁護士費用がかかるのかを確認するようにしましょう。
・遺産相続を弁護士に相談する12のメリットと注意点