遺産分割を弁護士に相談する理由とメリット&デメリット
遺産分割は、被相続人が死亡時に有していた遺産について、各遺産の権利者を確定させる手続きです。
遺産分割には3種類があり、①協議分割、②調停分割、③審判分割があり、法律問題ですので、弁護士に相談することをおすすめします。
遺産分割を弁護士に相談する理由は主に「トラブル回避」と「手続きによる時間の無駄やストレスの回避」です。
相続法や問題解決のための知識・経験に優れた弁護士に任せれば、期待以上の効果があります。
弁護士に相談する具体的状況を整理した上で、遺産分割についてどんなメリットがあるのか確認しておくと、円満な相続の手がかりのひとつになるはずです。
本記事では、遺産分割を弁護士に相談する理由とメリット&デメリットを網羅的に解説しますので、ぜひ最後まで読んで、損をしないようにしていただければと思います。
目次
遺産分割を弁護士に相談する理由
遺産分割では「知らないうちに損をした」「親族でもめて話し合いが進まない」「手続きがややこしくて終わらない」といったトラブルが予見されます。
以下で紹介する問題の原因に心当たりがある時は、弁護士に状況を診断してもらい、必要に応じてサポートしてもらいましょう。
知識不足・調査不足のため損する可能性がある
相続法が定める権利や手続きを知らないと、認識できないまま損する可能性は否めません。
知らないことの例として、借金も相続財産に含まれることや、遺言の有無に関わらず最低限の権利として認められる遺留分、特別受益・寄与分の考え方などが挙げられます。
また、知識だけでなく、財産状況や親族関係をよく調べなかったことが原因のトラブルも考えられます。
1.相続関係者による遺産の使い込み・財産隠し
2.相続関係者による遺言の偽造、変造、破棄、隠匿
3.親族その他関係者への生前贈与(結婚・教育資金等)
4.マイナスの財産(完済できていない借金)の相続
親族間で相続トラブルがある
亡くなった人が残した金額に関わらず、遺産分割を巡って親族同士でもめる「争続」は多々あります。もしもの時は、知識のある第三者を入れないと泥沼化しがちです。たとえ相続法に詳しい人が身内にいたとしても、その解釈を間違っていたり、トラブルの相手方が聞く耳を持たなかったりするため、有効な解決になるとは言えません。
1.相続不動産の所有や分割方法で意見対立がある
2.遺言の内容が不公平であり、遺言無効を主張する人がいる
3.多額の生前贈与により、取り分が少なくなる
4.音信不通の相続人がいて、手続きが進まない
手続きが面倒でストレスが大きい
遺産分割では、戸籍謄本の収集や預貯金の引継ぎなど、多くの手続きが待ち受けています。
これらは書類や電話連絡を多く伴うため、自力で対応しようとすると多くの時間がかかり、疲弊してしまいます。
また、準備なく急に相続開始に至った場合や、自己判断で手続きに参加できない相続人がいる場合は、それが大きな混乱を呼んでしまう可能性があります。
1.結婚歴や血縁関係が複雑で、相続人を把握しきれない
2.相続財産があちこちに分散し、場所や金額が分からない
3.自力で手続きできない人(認知症患者・未成年者・障がい者)がいる
4.複数の不動産があり、分割方法の検討や相続登記が必要
遺産分割を弁護士に相談する10のメリット
弁護士にできることは幅広く、相続・遺産分割の負担を大きく減らす役割を果たします。
相談や依頼のメリット、弁護士の業務内容を一目で分かるようにしてみましょう。
・取得分での不利益回避
・遺産分割協議の円滑化
・遺言の効力の確認
・遺留分侵害の対応
・債務相続時の的確な判断
・不動産の分割方法の提案
・相続人調査・相続財産調査の代行
・相続手続き(名義変更等)の代行(他士業とのやり取り)
・認知症患者・未成年者・障がい者の対応
・相続手続きの代行による依頼者のストレス軽減
・遺産相続を弁護士に相談する12のメリットと注意点
財産の取得分で不利益を被らない
遺産分割で知らず知らずのうちに損しないようにするには、相続人および相続財産の事前の調査を徹底し、適切に権利を行使しなければなりません。
弁護士は調査の段階から代行でき、もし不利益が生じそうなら、何をすればいいのかアドバイスできます。
提案するのは、弁護士が調停や訴訟の代理人となるのも見越した、次のような権利の主張です。
▼不利益を被る可能性がある場合に行使できる権利
遺産の使い込み、財産隠し | 不当利得返還請求(第703条)、損害賠償請求(第416条) |
多額の遺贈、生前贈与 | 遺留分侵害額請求権(第1046条)、特別受益の持戻し(民法第903条) |
第三者による遺産の横領 | 相続回復請求権(第884条) |
遺言の偽造、変造等 | 遺言無効確認訴訟(第960条) |
債務の相続 | 相続放棄(第915条)、限定承認(第922条) |
遺産分割協議がスムーズに進む
意見対立があり遺産分割協議が進まない時、無理に話し合いを続ける必要はありません。
混み入った問題があるケースでも、弁護士に代理人を務めてもらうことで、平行線だった話し合いが大きく動き出す場合が多々あります。
感情的な対立を排除し、合理的な解決策を提案できるからです。
それでも遺産分割調停や裁判に発展するとなれば、証拠その他の提出資料の作成が必要になり、高度な専門知識が求められるでしょう。
弁護士がいれば一切を任せられるため、自分で学んで対処しなくても問題ありません。
遺産分割について詳しく知りたい人は、次の記事も参考にしてください。
・遺産分割はどのようにするか
遺言の効力について的確な意見がもらえる
遺言の効力は弁護士なら一目瞭然です。相続法で定められた方式(書き方・作成方法)を厳密に理解し、方式違背をすぐ判断できます。
もし方式だけでは効力の判断ができないとなれば、遺言書を作成した当時の健康状態や状況について調べ、遺言書の有効性を判断します。
もし十分な判断能力に基づいて自分の意志で作成したと言えない場合、認知症の診断書など、証拠に基づいて無効を主張する手続きも任せられます。
・遺産相続で遺言書の正しい書き方と間違った書き方
遺留分侵害の対応ができる
遺留分(第1042条)とは、兄弟姉妹を除く相続人に認められている、遺言や遺産分割協議で減らすことのできない最低限の権利です。
遺言による贈与(遺贈)や、遺産を独り占めしようとする相続人がある場合、弁護士に相談すれば遺留分を適切に評価できます。
その結果「自分の取得分が少なすぎる」と分かった時は、相手方との交渉や支払いに関する取り決め、調停・訴訟対応まで、遺留分侵害額請求に欠かせない対応を一元的に任せられます。
・簡単に遺留分を請求する方法【5ステップ】
債務の相続について相談ができる
被相続人(亡くなった人)の借金がある時、弁護士なら相続放棄の是非を適切に見極められます。
相続放棄すると有益な財産も受け取れなくなるのを前提に、債務の調査から相続財産全体での収支を見極めるところまで任せられるのです。
債務が大きすぎる一方でどうしても残すべき財産がある場合は、得る財産を限度として弁済する限定承認(第922条)の提案も可能です。
・相続の承認・限定承認・放棄とは?
不動産の分割方法についてアドバイスを得られる
不動産はそれ自体の分割が不可能であり、相続人が2人以上いると頭を悩ませがちです。共有での相続、売却代金の分割等の方法があるものの、メリット・デメリットがあるため適切な方法はケースバイケースです。
弁護士は、土地建物について相続人の要望を考慮し、状況に合う分割方法を的確に提案できます。
相続人調査・相続財産調査を任せられる
適切な遺産分割を行うためには、事前の相続人及び相続財産調査が不可欠です。
問題は、親族関係に応じて戸籍謄本を収集したり、各金融機関や法務局に照会をかけたりする等、大変な手間がかかる点です。
特に遺産分割について悩みがなくても、調査全般を弁護士に任せることで、手続きの大幅な効率化に繋がります。
相続手続きを迅速・的確に実施できる
遺産分割の話し合いが済んだとしても、相続手続きはまだ完結していません。
各金融機関や法務局で提示するため遺産分割協議書を作成し、資産ごとに名義変更手続きが必要です。
遺産分割協議書については、弁護士なら協議した内容に沿って適切に作成できます。
面倒な名義変更手続きも、不動産の所有権移転登記(相続登記)ができる司法書士等の各士業と連携しながら代行可能です。
自力で手続きできない相続人の対応を任せられる
判断能力が不十分な相続人や未成年者の場合、単独での法律行為ができず、信頼できる家族の助言があっても遺産分割協議に参加できません。
未成年者の場合、親権者がいれば問題ありません。
しかし、認知症やその他の病気・障がいのせいで判断能力が低下している人には、成年後見制度による後見人の選任が必要です。
上記のような事情のある人がいる場合、弁護士に後見開始の審判等を全面的にサポートしてもらうことで、スムーズに全員で遺産分割できるようになります。
同時に、当事者が財産面で不利益を被るリスクも回避可能です。
相続の対応による心身のストレスを回避できる
相続手続き全般を弁護士に任せれば、遺産分割の話し合いに限らず、トータルで心身のストレス回避に繋がります。
特に、別居親族や高齢者が相続人にいる場合、依頼の有無で日常生活への影響が大きく変わります。
家族それぞれの気持ちに余裕が出て、受け継いだ財産の活用や、被相続人の支援で生活していた人の今後に集中できるでしょう。
遺産分割を弁護士に依頼するデメリットと注意点
遺産分割等の問題を弁護士に任せる場合、費用と相談先選定の手間がデメリットとして生じます。
デメリットを補って余りある効果は十分期待できますが、それぞれ念頭に置くべきです。
相談料や弁護士報酬の発生
相続・遺産分割について相談したい場合、その時間に応じて相談料が必要です。
弁護士に依頼して遺産分割協議書の作成や遺産分割調停、遺産分割訴訟の代理人として活動してもらう場合には、遺産総額に応じた一定の割合で報酬が発生します。
もっとも、費用対効果は期待以上に大きくなる場合が大半です。
度重なる帰省や役所通いが不要になり、頭の痛いもめ事もスピード解決することが多いためです。
相続を得意とする弁護士の選択
注意したいのは、弁護士は、専門分野や解決実績がそれぞれ異なり、相続に知見のある法律事務所を探すのにひと手間かかります。
加えて、実際に相談してみて信頼できると感じるかどうかも重要なポイントです。
とはいえ、相談先の選定に身構える必要はありません。解決能力の高い法律事務所が見つかれば、遺産分割の悩み事だけでなくプラスアルファの提案をもらえる等、満足度は高くなります。
相続・遺産分割が得意な弁護士の選び方
遺産分割を含む相続分野が得意な弁護士は、法律や弁護士ごとの特徴について全く知識がなくても見つかります。
注目したいのは、次の3つのポイントです。
解決実績の数と知識量が豊富
良い弁護士を選ぶ上で大切なポイントは、解決スピードや質に大きく影響する「解決実績の数と知識」です。
これについては、法律事務所の代表弁護士がある程度の弁護士経験を有していることが一つの目安となります。
また、相続に関する書籍を執筆していることも判断基準になるでしょう。
コミュニケーションが円滑に進む
弁護士選びで重要な基準のひとつとして、依頼前の相談で話しやすい・親身になってくれると思えることが挙げられます。
ここで弁護士の目線に立つと、依頼の達成には多くの情報が必要です。相談する人の目線では、必然的に「より繊細な家庭事情も話せる相手」だからこそ、良質な提案が得られると言えます。
説明がわかりやすい
相続手続きは、親族関係や手続きに関する難解な用語が多く、事前理解に苦しむ場合がしばしばあります。
説明された弁護士の業務を曖昧に理解していると、要望と対応の間に齟齬が生じ、満足できない結果になりかねません。
良い弁護士の条件は、専門用語をかみ砕く・相談者目線で話す等、分かりやすい説明が出来ることです。
おわりに│スムーズな遺産分割を実現するには
遺産分割は、知識や調査の不足・親族間の意見対立・手続きによるストレスがありますし、不利益や失敗がつきまといます。
相続分野に詳しい弁護士なら、法律に基づいて適切な取得分と権利行使についてアドバイスしつつ、亡くなった人の借金や不動産といった難しい財産について提案できます。
円満相続が見込めるケースでも、戸籍謄本の収集や財産調査、遺産分割に伴う名義変更等の手間を省き、ストレスの大幅な軽減に繋がります。
目立ったトラブルがない場合でも状況を弁護士に診断してもらうのが、スムーズな遺産分割のコツです。