相続でもめる家族の特徴とは?もめた場合の解決法やトラブル予防の方法
被相続人が死亡すれば、被相続人の配偶者や子供などに相続として財産が分与されます。
スムーズに相続が進むケースもありますが、親族間でもめてしまうようなケースも珍しくありません。
トラブルが大きくなって裁判に発展するようなことや、親族同士で絶縁状態になる場合もあるでしょう。
そこで今回は、相続でもめる家族の特徴や原因について解説します。
相続問題が起こらないようにする予防法や、トラブルになった場合の解決法についても紹介しているので参考にしてください。
相続でもめるケースは多い?
相続でもめるドラマや映画などを見かけることはありますが、実際に相続でもめている話を聞いたことはないという方が多いかもしれません。
しかし、相続問題は他人に話しにくいだけで、実際に相続でトラブルになっている方は多いです。
資産5000万円以下が相続でもめやすい
相続でもめる家庭はお金持ちだけだと考える方も多いかもしれませんが、実際はそうではありません。
相続でもめる割合が高いのは、一般的な家庭だといえます。
最高裁判所が作成した「令和4年度司法統計年報」によると、遺産分割事件で扱う財産額は1000万円以下や5000万円いかが多いことが分かっています。
遺産総額 | 件数 |
---|---|
1000万円以下 | 2,296 |
5000万円以下 | 2,935 |
1億円以下 | 802 |
5億円以下 | 524 |
5億円以上 | 49 |
算定不能 | 251 |
上記の表を見てわかるように、1000万円以下や5000万円以下の遺産総額のケースが相続で何らかのトラブルが起こって裁判に発展している割合が高いです。
つまり、どんな家庭にも相続問題は起こり得ることであり、問題がこじれて裁判になる可能性もあるといえるでしょう。
反対に、資産が多いほど相続でもめることは少なくなっています。
これは、資産が多い被相続人は生前に遺言書などを作成して相続問題が起こらないように対策しているケースが多いからといえます。
・遺産相続で遺言書の正しい書き方と間違った書き方
裁判外でもめるケースもある
先ほどは最高裁判所の調査による統計をご紹介しましたが、相続でもめている家族全てが裁判所を介して問題解決しようとするわけではありません。
裁判は、当事者同士で解決できなくなった場合の最終手段です。
まず、被相続人が遺言書を残していれば、遺言書に沿って遺産相続が行われます。
遺言書がない場合には、相続人達が遺産分割協議を行い、財産分与をどうするか決めることになります。
この遺産分割協議でトラブルになることも多いです。
遺産の種類や総額、相続人同士の間柄などが原因となり、話し合いが平行線になれば裁判へと発展します。
・遺産分割はどのようにするか
相続でもめる家族の特徴と原因
自分の家族や親族は相続でもめるようなことはないと考えていても、いざ相続が開始すればトラブルが起こる可能性があります。
相続でもめることになる原因は、大きく分けると「人間関係」「分割しにくい遺産がある」「立場の違い」が挙げられます。
それぞれの原因ごとに相続でもめる家族の特徴について紹介していきます。
人間関係
相続人同士の関係性は、遺産分割に影響しやすい傾向にあります。
法律で相続人になれる親族は定められており、相続人には優先順位がありますが、以下のような特徴があるともめやすいといえます。
相続人同士が疎遠、仲が悪い
被相続人の配偶者は無条件で相続人になりますが、子供がいる場合は子供も相続人になります。
子供数人がいれば独立してから疎遠になってしまうことや、何らかのきっかけで仲たがいしているようなケースもあるでしょう。
相続人同士が疎遠であったり仲が悪かったりすると、遺産分割協議でもめやすくなります。
遺産分割協議は相続人全員が参加しなければなりませんが、疎遠な人とは連絡がつかない場合、遺産分割協議を始められません。
また、遺言書がない場合は法定相続で兄弟姉妹館では相続が均等になることが定められていますが、仲が悪ければ互いに相続への割合について主張などを行ない、もめることになります。
推定相続人に何らかの問題がある
推定相続人とは、現状のまま相続が開始した場合に直ちに相続人となる人を指します。
この推定相続人が明確な場合は、相続手続きを進められます。
しかし、推定相続人の中に認知症の人がいる場合や、行方不明の人がいる場合、遺産分割協議を行うことができません。
認知症の相続人には、成年後見制度に関する審判を申立て、成年後見人を選任する必要があります。
また、行方不明者がいる場合も家庭裁判所へ申立て、不在者財産管理人の選任や、失踪宣告を行わなければなりません。
前妻の子供、認知した子供がいる
離婚をすれば夫婦は他人になるため、前妻に相続権はありません。
しかし、被相続人と前妻の間に生まれた子供には相続権があります。
子供が第三者と特別養子縁組をしているようなケースでは親子関係が切れていることになりますが、それ以外のケースでは前妻の子供は第1順位の相続人とされます。
また、認知した子供も同等の相続権が認められます。
しかし、被相続人が再婚して新しい配偶者や子供がいる場合、前妻の子供や認知した子供に遺産が相続されることに納得できないと考えることもあるでしょう。
後妻や後妻の子供たちが異論を唱えても、法律としては前妻の子供や認知した子供を除外して相続手続きを行うことはできないため、遺産分割協議で話し合いが必要です。
こうした子供の存在を相続人が把握していないようなケースもあり、協議が難航することもあります。
内縁の配偶者がいる
婚姻届けを提出していないパートナーは、内縁の配偶者として扱われます。
内縁の配偶者の場合、相続権は認められません。
生前被相続人と内縁の配偶者が一緒に生活していた場合、法定相続人である子供が預貯金や不動産などの資産を相続することで内縁の配偶者とトラブルになることがあります。
分割しにくい財産がある
遺産が全て現金や預貯金であれば相続人同士で分割しやすいですが、不動産など分割が難しい遺産がある場合は分割方法でもめる可能性があります。
遺産が自宅しかない
相続人が複数人いるものの遺産が自宅しかないような場合、誰が自宅を相続するかという点でもめやすくなります。
被相続人の配偶者がいる場合は配偶者が相続することで丸く収まりますが、兄弟姉妹で相続することになれば分割方法でもめる可能性があります。
この場合、特定の相続人が自宅を相続する代わりに代償金を支払うか、自宅を売却して売却金を分配する方法で解決することになるでしょう。
・相続・遺産分割における兄弟姉妹のトラブルと解決法
複数の不動産が相続に含まれる
複数の不動産が相続に含まれる場合、どの不動産を誰が取得するのかという点でもめることがあります。
不動産ごとに立地や広さ、利用状況は異なるため、資産価値も異なります。
そうすると、取得する不動産によって相続人間で不公平が生まれる可能性があり、もめる原因になってしまいます。
被相続人が事業をしていた
被相続人が経営者だった場合、事業に関する相続でトラブルになるケースも少なくありません。
誰が後継者になるのかという点でもめるだけではなく、事業の財産内容は複雑です。
後継者が必要な株式や資産が継承できなければ事業が廃業になる可能性もあるため、相続人同士だけではなく弁護士など専門家を加えて話し合いをする必要があります。
立場の違い
遺産相続では、法律によって財産を相続する範囲や順位が定められています。
配偶者は常に相続人となり、子供が第1順位になりますが、被相続人に対する立場の違いがあった場合は相続問題に発展することが多いです。
親の介護負担が相続人で異なる
特定の相続人に親の介護負担が大きく偏っていた場合、相続でもめやすい傾向にあります。
被相続人の生前、献身的に介護をしてきた相続人は、他の兄弟姉妹よりも多く相続を受けたいと考えるでしょう。
介護をしていない兄弟姉妹と相続を均等に分けることは不公平ともいえるからです。
こうした特別な貢献を被相続人に対して行っていた相続人は、他の相続人よりも相続を多く取得できる「寄与分」の請求が可能です。
寄与分が認められれば法定相続よりも多くの遺産を相続できますが、他の相続人が寄与分を認めなければトラブルに発展します。
・寄与分とは?
特定の相続人へ高額な生前贈与があった
被相続人が生前に特定の相続人へ高額な生前贈与を行っていたことでもめるようなことがあります。
相続人が複数人要る場合、特定の相続人が生前贈与や遺贈などを受け取ることは、被相続人から特別に受け取る利益である「特別受益」に該当します。
特別受益を考慮せずに遺産分割をすれば、特定の相続人が他の相続人よりも得をすることになるため、トラブルへと発展しやすいです。
こうしたトラブルを避けるために、「特別受益の持ち戻し」が行われます。
特別受益の持ち戻しとは、特別受益として得た利益を控除して相続を算定する方法です。
特別受益の持ち戻しは遺言書がなければ、相続人間の協議で持ち戻しするか否かを決めます。
特別受益を受けた相続人と受けていない相続人間では利益が相反するため、協議がスムーズにいかずにもめやすい傾向にあります。
・特別受益とは?
特定の相続人が財産管理をしている
特定の相続人が財産管理をしている場合、相続が発生した際にもめやすい傾向にあるといえます。
生前に被相続人の財産を管理していた相続人が財産を使い込んでいるのではないかと疑われることもあれば、相続人が財産内容の開示を拒否するような場合もあります。
認知症など加齢に伴い被相続人が自分で財産を管理できなくなった場合には、相続でトラブルにならないようにするためにも、お金の使い道を仕訳帳につけるなどして事前に対処しておくようにしましょう。
相続で家族がもめないようにするための予防法
相続で家族がもめることを予防するには、生前に被相続者が相続対策をしておくことが重要です。
家族が相続でもめないようにするための予防策には、次のような方法が挙げられます。
遺言書を作成する
遺言書の作成は、相続で家族がもめないようにするための最善の予防法といえます。
遺言書があれば、基本的にはその内容に従って相続手続きが行われます。
ただし、遺言書は法的に有効なものを作成することが大切です。
自筆で書く「自筆証書遺言書」は、様式に不備があると無効になってしまう恐れがあります。
公正証書で遺言書を作成していれば相続人が勝手に開封することや破棄することを防げますし、遺言書の有効性を巡ってトラブルになることも少ないです。
また、あまりに不公平な内容の遺言書は相続人同士でもめる原因になってしまうため、相続人の遺留分を侵害しないように遺言書内容は配慮する必要があります。
家族信託を利用する
家族信託とは、信頼できる家族に不動産や預貯金などの資産を託し、管理や処分を任せる財産管理方法です。
家族信託は信託契約を締結し、信託財産管理用の銀行口座意を開設することになります。
相続人となる人達を受託者として契約をすれば、相続トラブルを避けやすくなるでしょう。
相続でもめた場合の解決法
相続で家族がもめてしまった場合、問題を放置するほどこじれてしまう可能性があります。
相続でもめた場合には、早急に解決を目指すための対処をすることが大切です。
感情的にならずに話し合う
遺言がない場合は遺産分割協議で相続人同士が話し合うことになります。
この話し合いの際に感情的になれば、トラブルが大きくなってしまいます。
互いに感情的になると話し合いが進まないため、相続手続きも進みません。
話し合いの際には冷静を保ち、相手の話を聞きながら自分の主張も行うようにしましょう。
弁護士に相談する
話し合いで相続手続きが進まない場合、早めに弁護士に相談することをおすすめします。
当事者同士では感情的になってしまいますが、弁護士に依頼すれば代理人として弁護士が話し合いを進めます。
第三者が入ることで冷静に話を進められますし、弁護士は法律を踏まえた説得を行うことができます。
弁護士の代理交渉でも解決しない場合は家庭裁判所での調停や審判を申立てることになりますが、そのまま弁護士に依頼することが可能です。
弁護士が代理人になることで精神的にも大きな支えとなるでしょう。
まとめ
どのような家族でも相続でもめる可能性はあるため、生前から相続トラブルが起こらないように遺言書の作成などで予防策を取っておくことが最善策だといえます。
すでに被相続者が亡くなって遺言書が作成できなかったという場合には、相続でもめないように相続人同士が冷静に話し合いを行うことが大切です。
相続人同士の話し合いでは解決が難しいような場合や、相続に関して疑問や問題が発生した場合には、早急に弁護士へご相談ください。
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