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弁護士法人みらい総合法律事務所

弁護士法違反で税理士損害賠償の事例を弁護士が解説(相続税)

監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所
 代表社員 弁護士 谷原誠

最終更新日 2024年10月20日

弁護士法第72条に関する裁判例

「弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。
ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。」

そして、弁護士法第77条により、第72条の規定に違反したものは2年以下の懲役又は300万円以下の罰金に処する、とされています。

これが、いわゆる「非弁行為」というものです。

どのような行為が「非弁行為」になるかについて、最高裁平成22年7月20日判決は、立ち退き交渉を請け負った事例について、

「被告人らは、多数の賃借人が存在する本件ビルを解体するため全賃借人の立ち退きの実現を図るという業務を、報酬と立ち退き料等の経費を割合を明示することなく一括して受領し受託したものであるところ、このような業務は、賃貸借契約期間中で、現にそれぞれの業務を行っており、立ち退く意向を有していなかった賃借人らに対し、専ら賃貸人側の都合で、同契約の合意解除と明渡しの実現を図るべく交渉するというものであって、立ち退き合意の成否、立ち退きの時期、立ち退き料の額をめぐって交渉において解決しなければならない法的紛議が生ずることがほぼ不可避である案件に係るものであったことは明らかであり、弁護士法72条にいう「その他一般の法律事件」に関するものであったというべきである。」

と判示しました。

税理士が非弁行為を理由に損害賠償請求された裁判例

非弁活動による弁護士法違反を理由として税理士損害賠償事件となった東京地裁令和4年1月28日判決を解説します。

(事案)

相続に関する遺産分割協議に関し、相続人である原告らは、税理士である被告が、相続税申告業務について依頼していないのに、遺産分割協議に介入、主導したことが、弁護士法72条違反であるとして、支払い済みの報酬、弁護士費用、慰謝料などを請求した。

(原告の主張)

1 ①相続人及び相続財産の確認、確定、②相続財産の分割協議の取りまとめ、③預貯金の引出しに至るまで銀行と協議及び手続をすること、④相続税の申告等の委任状を求めた行為

2 原告らがブラジル在住の相続人に提示する遺産分割方針の案文を作成した行為
原告らに対し、ブラジル在住の相続人の意向を確認するためブラジルに渡航するよう勧奨した行為

3 遺産である預金に関し、代理口座の開設、被相続人名義の口座の解約、被告税理士Y1名義への預入れ

4 遺産に係る分配案の作成をした行為

5 報酬を受領した行為

(判決)

被告らの行為は、次のとおり、法律事件に関する行為でなく、また、法律事件に関しない事柄について報酬を受領したといえるから、弁護士法72条に違反しない。

(ア) 原告及びCに対して委任状の署名押印を求めた行為

被告税理士Y1は、Aの相続に係る相続税の申告を受任した経験があり、委任状を徴求する前から、Dの相続人の確定に必要な調査や資料の収集を司法書士や原告に求め、原告がこれに対応し、Cがその状況を被告税理士Y1に確認していたというのであり、また、相続人と相続財産の確定から金融機関と協議等に至るまでのほか、相続税の申告の委任を求め、原告及びCがこれに応じたというのである。

そうすると、原告及びCは、将来的に相続税の申告をすることを予定して、そのための必要な行為を任意に委任したものであり、原告及びCと被告税理士Y1との間で、何らかの紛争が生じる余地はなかったといえる。

(イ) 原告及びCがブラジル相続人に提示する遺産分割方針の案文を作成した行為、原告をして3回にわたってブラジルに渡航することを勧奨した行為

まず、ブラジル相続人が確定した一方で、その遺産相続に関する意向は明らかでなかったのであり、法的紛議が生じるおそれがないことは明らかでなかったといえる。そうすると、当事者である原告自身が、ブラジル相続人の意向を確認する行動をとるのが適切であって、そうした勧奨をしたことが法律事件を取り扱ったとは評価し得ない。

次いで、原告が渡航してブラジル相続人の意向が原告及びCの意向に沿うものであることが確認された後、最終的な合意書を取り交わすに当たり、原告及びCの提案書の作成をしたというのであるから、この点に関し、当事者間に何らかの法的紛議が生じるおそれはなく、すでに確定した意向を書面にしたというにとどまっている。

(ウ) 代理口座の開設、D名義の口座の解約、被告税理士Y1名義への預入れ

原告及びCが被告税理士Y1に委任した権限の範囲内であり、また、口座開設名義やその後の金銭の動きを見ると、相続人が一時的に管理する趣旨のものであることが明らかである。そうすると、この点に関し、当事者間に何らかの法的紛議が生じるおそれはなく、原告及びCの意向に沿って金銭を一時的に管理していたにすぎないといえる。

(エ) 遺産に係る分配案の作成をした行為

被告税理士Y1が作成した分割案は、その約6年前にDの遺産分割の方針について原告、C及びブラジル相続人の間で合意がされていて、この合意の帰結を算定したものであり、当事者間に何らかの法的紛議が生じるおそれはなかったといえる。

(オ) 報酬を受領した行為

これまで説示したところによれば、原告が主張する各行為はいずれも法律事件に関する行為とはいえないのであるから、こうした行為の対価を受領したことが弁護士法72条に反する行為とはいえない。

 → 税理士勝訴。

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以上です。

税理士が、相続人らの遺産分割協議に関与することがあると思います。

この場合、どこからが弁護士法違反になるのか、不安もあるのではないでしょうか。

例えば、兄と弟の双方が遺産であるマンションを取得したがって対立した場合に、税理士が兄の側に立って弟を説得したら、どうなるでしょうか。

この場合には、弁護士法違反となる可能性が高いです。

したがって、遺産分割協議において、意見の対立が発生した場合には、税理士としては、それ以上は深入りしない方が無難です。

参考記事:税理士の相続税のミスによる損害賠償責任

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