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弁護士法人みらい総合法律事務所

委任契約の成立が争われた税理士損害賠償

監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所
 代表社員 弁護士 谷原誠

最終更新日 2024年9月10日

東京地裁平成27年5月19日判決(判例秘書登載)です。

(事案)

●税理士は、A社、B社と顧問契約を締結していた。

●原告Xは、両社の代表取締役であり、Xの妻である原告X2は、両社の取締役である。

●X及びX2は、共有の居住用不動産を売却し、譲渡損失が生じたが、損益通算ができないものであった。

●原告らが被告税理士Yに対し、相談したところ、Yは、居住用不動産買換特例の適用を受けることで損益通算ができる可能性があると回答した。

●Xらは、Yの助言に基づき、A社から借り入れることとし、その後B社からの借入に変更したが、それぞれYに対し、特例の適用ができるかどうか、確認した。

●Xらが不動産を購入し、買換特例の適用を受けることを前提とした確定申告書を作成し、税理士Yに確認を求めたが、Yからは、特段の問題意識は伝えられなかった。

●後日税務調査があり、特定の適用が否認され、更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分を受けた。

●なお、Xらは、税理士Yに対し、過去に不動産や株式について、何度か税務相談をしたことがあった。

(争点)

(1)原告らと被告との間の税務顧問契約の有無
(2)原告らと被告との間の委任契約の有無及びその内容
(3)不動産の売却に関する損益通算に関して、原告らに対して、被告が誤った説明をしたか。

(裁判所の判断)

(1)原告らと被告との間の税務顧問契約の有無

過去に被告が無償で原告らの税務相談に応じたことがあるものの、その回数が多いわけではなく、かつ、その多くは被告と税務顧問契約がある会社との関係がある事柄の税務相談であること、原告らは、本件における不動産の売却を踏まえた原告らの確定申告についても、被告に委任することなく行っていることからすると、直ちに、原告らと被告との間で包括的な税務顧問契約が成立していたと認めることはできず、他にこれを認めるに足りる証拠はない。

(2)原告らと被告との間の委任契約の有無及びその内容

相談料の有無・金額の確認等をした形跡はないこと、経理担当者から損益通算の適用の有無を正確に判断するための売買契約書、過去の確定申告書等の資料を送付されていないこと、原告らからは、税理士事務所職員に対し、損益通算をした場合の試算がされたものが送付された過ぎないことからすると、職員において損益通算の可否についての確定的な回答が得られるものではないことは明らかであり、業務としての税務相談の回答を求めたものと認めることができない。

3)不動産の売却に関する損益通算に関して、原告らに対して、被告が誤った説明をしたか。

不動産の損益通算に関して、原告らと被告との間には何らの契約関係も認めることができないのであるから、被告に契約上の義務違反を認めることができない。また、税理士事務所職員は、確定的な回答をしているわけでもなく、A社の経理担当者も確定的な回答を求めたと認めることはできないのであるから、その回答の適否如何を問わず、税理士事務所職員に過失は認められないのであって、被告に債務不履行も不法行為も認めることはできない。

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以上です。

本件では、顧問先会社の代表者との顧問契約や税務相談の委任契約を否定しました。

しかし、役員との無償の顧問契約を認定した裁判例もあります(東京地裁平成12年6月30日判決、TAINS Z999-0066)。

したがって、あくまで事例判断であり、かつ、本件事実関係と同様の事案においても、顧問契約や委任契約が否定されるとは限らないことをご注意ください。

なお、委任契約は、無償でも成立します。

したがって、やはり、税賠対策は、必須です。

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