今回は、法人の役員や従業員、あるいは納税者の家族が隠蔽又は仮装をした場合に重加算税の賦課要件を満たすか、について解説します。
国税通則法第68条1項は、
(1)過少申告加算税の規定に該当する場合
(2)納税者が
(3)その国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠蔽し、又は仮装し、
(4)隠蔽し、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出していた
場合に重加算税が賦課されると規定しています。
役員、従業員、家族等が隠蔽又は仮装した場合に、(2)の「納税者が」に該当するかどうか、という問題です。
この点、最高裁平成18年4月20日判決は、税理士が納税者に無断で隠ぺい又は仮装行為をした事案において、隠ぺい仮装行為を納税者「本人の行為と同視できる場合」に重加算税の賦課要件を満たすとしています。
「課税処分に当たっての留意点」(平成25年4月 大阪国税局 法人課税課、TAINS H250400課税処分留意点、179頁)は、以下のように記載しています。
========================
「代表権を有する者が行った不正行為は会社の行為となるが、その他の会社関係者が行った不正行為の結果、過少申告が生じた場合であっても、その不正行為を会社の行為と同視して重加算税を賦課できる場合がある。
従業員であっても、会社の主要な業務を任され、長期にわたる不正や多額な不正など会社が通常の注意をすれば容易に発見できる不正行為を管理監督しなかったために、これを見過ごし、結果としてこれを起因とする過少申告が生じた場合には、会社の行為と同視することができる」
========================
過去の事例では、以下のようになっています。
【納税者敗訴】
(1)納税者の父親
大阪地裁昭和36年8月10日判決
父親が不動産売却の代理人かつ管理の実権を持っていた。
(2)納税者(法人)の取締役
名古屋地裁平成4年12月24日判決
代表者の実弟であり、かつ常務取締役
(3)納税者(法人)の代表者の非親族の経理補助業務従業員
大阪地裁平成10年10月28日判決
・管理監督不十分
・知り得たのに放置
・代表者の遠縁で法人設立時から従業員
【納税者勝訴】
(1)納税者の弟
鳥取地裁昭和47年4月3日判決
共同経営で売上折半。弟が売上を脱漏し、仮装名義に入金の事実を納税者は知らず。
(2)共同相続人の1人
国税不服審判所昭和62年7月6日裁決
相続人の1人が被相続人及びその一族の不動産賃貸料収入等を運用した無記名定期預金を隠ぺいした事案。他の相続人(納税者)は了知していない。
このように、納税者本人の行為と同視できるかどうかについては、個別具体的事情によってきますので、重加算税賦課決定がされた場合は、慎重に検討することが重要です。
迷った時は、ご相談ください。
「税理士を守る会」は、こちら
https://myhoumu.jp/zeiprotect/new/