今回は、更正の請求についてです。
それほど頻繁に活用するものではないと思いますので、23条1項と2項の関係などを研究する機会も少ないと思います。
今回は、最高裁平成15年4月25日判決(TAINS Z253-9333)を取り上げて、この点について考えてみたいと思います。
(事案)
亡父の相続に関して遺産分割協議に基づき相続税の申告をした後、他の相続人から遺産分割協議無効確認の訴えを提起され、同訴訟において、上記遺産分割協議が通謀虚偽表示により無効である旨の判決が確定したのを受けて、国税通則法23条2項1号に基づき更正の請求をしたところ、更正をすべき理由がない旨の処分を受けた事案です。
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国税通則法23条2項1号
納税申告書を提出した者又は第二十五条(決定)の規定による決定・・・を受けた者は、次の各号のいずれかに該当する場合・・・には、同項の規定にかかわらず、当該各号に定める期間において、その該当することを理由として同項の規定による更正の請求・・・をすることができる。
一 その申告、更正又は決定に係る課税標準等又は税額等の計算の基礎となつた事実に関する訴えについての判決(判決と同一の効力を有する和解その他の行為を含む。)により、その事実が当該計算の基礎としたところと異なることが確定したとき その確定した日の翌日から起算して二月以内
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ということで、条文の文言上は、要件に当てはまる事案です。
(裁判所の判断)
納税者敗訴です。
「上告人は、自らの主導の下に、通謀虚偽表示により本件遺産分割協議が成立した外形を作出し、これに基づいて本件申告を行った後、本件遺産分割協議の無効を確認する判決が確定したとして更正の請求をしたというのである。そうすると、上告人が、法23条1項所定の期間内に更正の請求をしなかったことにつきやむを得ない理由があるとはいえないから、同条2項1号により更正の請求をすることは許されないと解するのが相当である。したがって、本件処分は適法」
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文言上要件に当てはまるにもかかわらず、認めなかった理由が詳しく書いてありませんので、以下、解説します。
国税通則法23条1項は、納税義務者が課税標準等又は税額等の計算が法律の規定に従っていなかったこと又は計算に誤りがあったことにより、税額を過大に申告した場合等に法定申告期限から5年以内に限り更正をすることができるようにした規定です。
これに対し、2項は、後発的に課税要件事実に変動が生じた場合に、確定した租税法律関係を変動した状況に適合させるのが趣旨です。
国税通則法施行令を見ていただくと、全て申告時には予知しえなかった事態又はやむを得ない事由がその後において生じた場合の救済規定です。
ということは、本件のように、自ら通謀虚偽表示をしていたような場合には、本来であれば、1項により更正の請求をすべき場合であり、更正の請求期間内に更正がやむを得なかった納税者を救済する趣旨の規定である2項の適用を予定していない、ということになります。
そのようなことから、本件判例では、2項の適用が認められなかったと考えられます。
このように租税法では、文理解釈が原則とされるものと、法律の趣旨に反する適用は排除される傾向にありますので、ご注意いただきたいと思います。