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弁護士法人みらい総合法律事務所

賃料で同族会社の行為計算否認の裁判例(税務訴訟)

監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所
 代表社員 弁護士 谷原誠

最終更新日 2024年7月29日

土地の賃料に関し、同族会社の行為計算否認が適用された事例をご紹介します。

高松地裁平成24年11月7日判決です。

納税者敗訴となっています。

(事案の概要)

●個人であるYが、自分が代表者である会社に対して土地を賃貸し、会社が第三者に転貸していた。

●税務調査が入り、会社が得ている賃料と比較して、Yが会社から受領している賃料が不当に低額であるとして、同族会社の行為計算の否認により、所得税法157条1項により更正処分をした事例。

(裁判所の判断)

<一般論>

●所得税法157条1項による否認の対象となる「同族会社の行為又は計算」については、その趣旨に鑑み、専ら経済的、実質的見地において、当該行為又は計算が通常の経済人の行為として不合理、不自然なものと認められる場合をいうと解するのが相当である。

●転貸方式を採用している場合における不動産所得に関する所得税法157条1項の適用の有無の判断にあたっては、管理委託方式を基にした算定方法(適正な管理料割合に基づいて算定した適正な管理料相当額を転貸料収入から控除して適正な賃貸料を算定する方法)により適正な賃貸料を算定し、これと実際の賃貸料を比較することにより、賃貸料収入が経済的合理性を欠き、所得税の負担を不当に減少させるものと評価できるかを検討すべきである。

●高松国税局長の指示で各税務署長が作成した報告書によれば、適正な管理料割合は、

平成18年分は3.34%、

平成19年分は3.86%、

平成20年分は3.69%

となっている。

この数値は、所定の条件の下、恣意を加えることなく、原告と業種、業態、不動産の所在地、事業規模等が類似する比準同業者を抽出したものと認められ、その数をみると平成18年度分及び平成19年度分が各3件、平成20年度分が5件であって、その数だけでは同業者間に通常存在する程度の営業条件等の個別性を捨象し、平均化するに足りる数とまでは言い難い面もあるところ、それぞれの年において、比較の対象となる管理料割合の事例をみると、各年の平均値といずれも近似していることにも照らし、十分合理的なものと認められる。

●この結果に基づくと、本件では、以下のようになる。

(ア) 平成18年分

a 転貸料収入   1888万1539円

b 適正な管理料相当額 63万0643円
         
c 適正な賃貸料  1825万0896円

d 実際の賃貸料   545万3250円

(イ) 平成19年分
a 転貸料収入       2217万円
         
b 適正な管理料相当額 85万5762円
         
c 適正な賃貸料  2131万4238円

d 実際の賃貸料   677万7000円
      
(ウ) 平成20年分
         
a 転貸料収入   1742万2500円
         
b 適正な管理料相当額 64万2890円
         
c 適正な賃貸料  1677万9610円
         
d 実際の賃貸料   530万6850円

●本件は、著しく低額で経済的合理性を欠いており、その結果として原告の所得税の負担を減少させるものであると認められる。

したがって、本件各係争年に係る原告の不動産所得につき、所得税法157条1項を適用することができる。

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今回は、代表者が同族会社に土地を賃貸し、同族会社が第三者に転貸していた事例です。

ここで、賃料設定をきちんとしておかないと、同族会社の行為計算否認が適用されてしまう可能性がある、という意味で、参考になる判例です。

裁判所は、土地を賃貸管理委託した場合の委託料を参考に適正賃料を算出し、当該適正賃料と実際の賃料を比較して、著しく低額かどうかを判断しました。

本件では、適正賃料に比較して、3分の1以下の賃料額だったために、著しく低額とされたものです。

したがって、本件のような態様での賃貸借契約を締結する際には、賃貸管理における委託費を一つの参考として適正賃料額を算出し、年間の賃料額が適正賃料額の半分以下にならないように賃料設定をすることも検討してよいと思います。

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