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弁護士法人みらい総合法律事務所

資金移動がみなし贈与と認定された事例(審査請求)

監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所
 代表社員 弁護士 谷原誠

最終更新日 2024年8月9日

今回は、夫名義の預金口座から妻名義の預金口座に資金を移動した行為に対し、課税庁がみなし贈与と認定したが、処分が取り消された裁決例をご紹介します。

令和3年7月12日裁決です。

(事案)

請求人である妻は夫の預金口座から妻の預金口座に預金を移動し、ファンドや株式、投資信託等を購入した。

請求人は上場株式等の配当等に係る配当所得の源泉徴収税額○○○○円の還付を求めて、所得税及び復興特別所得税の確定申告をした。

夫が死亡し相続が開始したが、本件各入金を原資とする財産は、課税価格に算入しなかった。

原処分庁は、請求人に対して、本件各入金について、対価を支払わないで利益を受けたと認められるため、相続税法第9条の規定により、請求人が本件○○○○円を夫から贈与により取得したものとみなされるとして、贈与税の決定処分等をした。

(原処分庁の主張)

1 K銀行の担当者が、請求人に投資信託に関する説明を行い、その後も請求人に対して説明やフォローを行っていた。

2 請求人が、有価証券の購入や運用について、J証券に全て指示又は注文を行っていた。

3 請求人は、投資信託分配金等を、いずれも、K請求人名義普通預金口座に入金し、平成27年分及び平成28年分の所得税等において請求人の所得として確定申告している。

(裁決)

夫名義口座については、夫の財産であることに争いがないから、夫名義口座から請求人名義の各口座に入金された本件○○○○円の出捐者は、夫である。

請求人は、本件各入金の前後を通じて、夫の給与等を含むF家の家計全般を管理していたことが認められる。

請求人が、夫から同人の財産に係る管理・運用の包括的同意を得た上で、その財産を主体的に管理・運用していたと解しても、あながち不自然とはいえない。

請求人自らが私的に資金を必要とする事情も認められず、我が国において、夫婦間における財産については、一方が自己の財産を他方の名義の預金等の形態で保有することが珍しくないことを併せ考えると、請求人が専らF家の生計を維持するために夫の財産を管理・運用していたと解するのが相当である。

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本件のようなケースで、処分庁から名義預金と認定される事案は、裁決などにも多いのですが、みなし贈与と認定された事案なので、ご紹介しました。

相続人名義の預金口座がある場合に、それが名義預金に該当するかどうか、迷う場面も多いと思いますが、過去の裁決、裁判例では、概ね、以下の判断基準で結論を導いています。

(1)名義人に預金原資はあったか(収入総額)

(2)預金の出捐者は誰か

(3)預金通帳、印鑑の管理は誰か

(4)その預金から利得を得ているのは誰か

(5)通帳の届出住所は誰の住所か

(6)贈与契約書はあるか

(7)贈与税の申告はされていたか

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