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弁護士法人みらい総合法律事務所

総則6項控訴審判決(税務訴訟、納税者勝訴)

監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所
 代表社員 弁護士 谷原誠

最終更新日 2024年10月11日

今回は、相続税の総則6項で納税者勝訴の控訴審裁判例をご紹介します。

控訴審も納税者勝訴です。東京高裁令和6年8月28日判決。

当事務所でも、現在総則6項で争っているものがありますので、興味深いです。

(事案)

被相続人は、平成26年6月11日に死亡した。

相続人は、子である原告K及び原告H、被相続人の妻であるMの3名。

O社は、薬局の経営、医薬品の製造及び販売等を目的とする株式会社である。

O社は、評価通達178に定める「大会社」に該当し、その株式は、評価通達168に定める「取引相場のない株式」に該当する。

被相続人は、平成26年5月29日、医薬品卸売業を業とするV社との間で、O社株式の譲渡に向けて協議を行うことについての基本合意を締結した。

株式はMに集約され、M及びV社は、譲渡日を平成26年7月14日又はM及びV社が合意して別途定めた日として、O社株式6万株を譲渡価格63億0408万円で譲度する契約を締結した。

平成26年7月14日、本件株式譲渡契約に係る代金決済が行われ、MはO社株式6万株をV社に譲渡した。

原告らは、相続税の申告において、本件相続株式の価額につき、評価通達180に定める類似業種比準価額によってその総額を1億7518万0400円(8186円×2万1400株)と評価した。

処分行政庁は、相続株式の価値算定について株式会社Dが作成した平成30年2月28日付けの株式価値算定報告書における報告額の平均値17億2000万円(1株当たり8万0373円。)とすることが適当である評価通達6に基づき、本件相続株式の価額は国税庁長官の指示を受けて算定した価額である本件算定報告額によるとし、また、申告された土地の評価額に(時価より高額である)誤りがあるとして、本件各更正処分等をした。

(判決)

1 M&A価額の特殊性

取引相場のない株式の交換価値は、本来、専門的評価を経ない限り判明し得ない。
高度な経営判断や双方の交渉の結果等により株式の売買代金が決定されるのであって、売買代金が交換価値を反映しているとは限らない。

評価通達と譲渡価額のかい離の有無を公平に判断するためには、他の相続案件も含め、取引相場のない株式その他市場性のない相続財産の全てについて、専門的評価を行うべきであって、合理的な理由がないのに、特定の相続財産のみについて専門的評価を行い、これを基にして課税処分を行うことは、平等原則に反するものというべき。

2 相続税の負担を減じる行為

譲渡予定価格が、その時点で相続が発生した場合における評価通達180による評価額を大きく上回るものであったことは、本件の経過に照らし明らかであるから、本件基本合意は、本件被相続人の生存中に売買契約が成立した場合、代金債権に転化し、又は代金が支払わることによって、相続税の負担を増大させる可能性を有するものであり、相続税の負担を減じ、又は免れさせるという効果は存しない。

本件被相続人又は被控訴人らが、相続税の負担を減じ、又は免れさせる行為をしたと認めることができない以上、本件被相続人又は被控訴人らの行為に着目した場合に、他の納税者との関係で不公平であると判断する余地はない。

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以上です。

これまでは、土地や株式で争われていましたが、M&Aの譲渡価額の算定の特殊性が影響していますので、一般化しづらいところです。

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