本記事では、近年の脱税事案について、事件の概要や脱税額、刑事罰の量刑(懲役年数・罰金額)などについて解説します。
(1)脱税とは?
脱税とは、不当に納税を免れる行為で、犯罪になります。
たとえば、次のような行為が該当します。
「所得隠し」
売上を隠蔽して過少に申告することで、納税額を少なくする行為です。
「架空経費・経費の水増し」
存在しない経費を計上したり、経費を水増しして計上するなどの行為です。
脱税が発覚した場合、税務署が行なう通常の税務調査ではなく、国税局の査察部(通称「マルサ」)による査察調査の対象になります。
そして刑事告発されたうえで、最終的には刑事裁判により刑事罰が科されることになります。
なお、脱税が故意でない場合は申告漏れになるため、刑事罰の対象にはなりません。
(2)脱税で刑事告発される基準・目安と刑事罰について
脱税の代表的なものには、所得税法違反、法人税法違反、消費税法違反などがあります。
所得税法第238条1項、法人税法第159条1項、消費税法第64条1項では、罰則について次のように規定しています。
「10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。」
ただし罰金については、脱税額が1000万円を超えるときは、脱税額まで増額される場合もあることに注意が必要です。
(3)実刑となる目安は?
刑事事件化した脱税事件で起訴されて有罪判決となった場合、罰金刑のみが科されることはまれです。
通常は、執行猶予付きの懲役刑、または実刑判決となるケースがほとんどで、これに罰金刑が併科されることが多いといえます。
実刑判決が出されればすぐに刑務所に行かなければならず、執行猶予付きの懲役刑であれば通常の社会生活を継続することができます。
実刑判決になった場合、実生活に大きな影響が出ることは免れないのでしょう。
実刑となるかどうかの目安としては、やはり脱税額の大きさがポイントになります。
たとえば、本記事に掲載している過去の脱税事件の量刑ファイルから分析すると、次のような傾向がわかります。
・法人税法違反や消費税法違反の事案で、脱税額が巨額のケースでは、社長には執行猶予なしの懲役刑と罰金刑が併科され、法人としての会社には罰金刑が科されるケースが多い。
脱税額の例:約8億円、約10億円、約10億6000万円、約17億円
・法人税法違反などの事案では、脱税額が1億円台前後~4億円台のケースで執行猶予付きの懲役刑と罰金刑の併科の判決がみられるが、5000万円台などの1億円未満の事案でも起訴され、有罪となるケースもある。
・所得税法違反の事案では、2~3年間で1億円前後~4億円までの脱税額では執行猶予付きの懲役刑と罰金が併科されるケースが多いが、個人の場合は2~3年間で脱税額が2000万円台~6000万円台でも同様に執行猶予付きの懲役刑と罰金が併科されるケースもある。
・税理士が関与した脱税事案は、より悪質とみなされ、執行猶予なしの懲役刑と罰金刑が併科される傾向がある。
なかには懲役6年、罰金7000万円という重い量刑が科された事案もある。
・脱税額を完納、あるいは一部を納付している場合、また前科がない、反省しているなどの事情がある場合は執行猶予となる可能性がある。
ただし、量刑は脱税金額だけで決定するのではなく、裁判に表れたすべての事情に基づいて決定されるため、実刑の目安は参考程度と考えておくほうがいいでしょう。
なお、国税庁が公表している「令和4年度 査察の概要」によれば、告発状況は次のようになっています。
- ・告発件数:103件
- ・脱税総額(告発分):100億円
- ・告発率:74.1%(平成18年以来の高水準)
- ・有罪判決数:61件(一審判決)
- ・実刑数:3人
- ・最高懲役年数:懲役1年4月(査察事件単独)
懲役2年8月(他の犯罪と併合されたもの) - ・有罪率:100%
近年は、消費税事案、無申告事案、国際事案などが重点的な取り締まり対象となっている傾向があります。
また、刑事告発されて起訴された場合、有罪率は極めて高く、ほぼ100%であることも知っておくべきでしょう。
【参考資料】:令和4年度 査察の概要(国税庁)
(4)脱税額に対する罰金額の比率について
法律上、罰金については、脱税額が1000万円を超えるときは、脱税額まで増額が可能とされています。
ただし一般的には、罰金額の目安は脱税額のおよそ10~30%になっています。
なお、加算税のうち特に重加算税は高率となっており、隠ぺい又は仮装した部分に相当する税額につき、過少申告加算税に代えて、35%の割合を乗じた重加算税が課せられます。
・脱税で告発されたら?(査察、マルサ)
目次
脱税事件:量刑ファイル001
事件の概要
法人税や消費税計約1億1300万円を脱税したとして、法人税法違反などの罪に問われた大阪市の雑貨輸入販売会社社長の被告(当時39歳)に対する判決公判が2022(令和4)年8月18日、大阪地裁であり、裁判長は被告に対し懲役1年6月、執行猶予3年(求刑は懲役1年6月)、法人としての同社には罰金2500万円(求刑罰金3500万円)の判決を言い渡した。
判決理由は次のとおり。
- ・2016(平成28)年~2018(平成30)年、被告はインターネット通販サイトで売り上げた商品の売上金を親族ら複数の名義人の預金口座を準備し、所得を隠して申告せず、会計帳簿も作成していなかった。
- ・脱税額は高額で結果は重い。巧みな手段を用い、確定申告すらせず悪質だ。
- ・一方、脱税分や重加算税を既に納付したことなどを考慮し、執行猶予とした。
脱税額:約1億1300万円
量刑:懲役1年6月、執行猶予3年(社長)
罰金2500万円(会社)
脱税事件:量刑ファイル002
事件の概要
取引業者からのリベートなど1億1820万円の収入を申告せず、約5200万円を脱税したとして、所得税法違反の罪に問われた日本大学の前理事長(当時75歳)に対する判決公判が2022(令和4)年3月29日、東京地裁であり、裁判長は懲役1年、執行猶予3年、罰金1300万円(求刑懲役1年、罰金1600万円)を言い渡した。
起訴状によると、前理事長は2018年に1000万円、2020年に1億820万円の計1億1820万円の収入を税務申告せず、計約5200万円の所得税を免れたとされる。
公判で検察側は、前理事長や妻が側近の日大元理事(当時64歳、背任罪で起訴)を介して大学の取引業者からリベートを受け取るようになったと指摘。
また前理事長が15年にも申告漏れを指摘されて修正申告していた経緯に触れ、「納税意識の欠如は顕著だ」、「我が国で有数規模の学校法人理事長の立場を利用した犯行で社会的非難は強い」とも批判した。
前理事長は「争う気はありません」と起訴内容を認めたが、取引業者との関係や受領金の趣旨について具体的に説明することはなかった。
脱税額:約5200万円
量刑:懲役1年、執行猶予3年、罰金1300万円
脱税事件:量刑ファイル003
事件の概要
2015(平成27年)8月期までの5年間で、架空の業務委託費を計上するなどの手口で法人税や消費税など計約2億1000万円を脱税したとして法人税法違反罪などに問われた、ビル型納骨堂(大阪市浪速区)の社長(当時65歳)の判決公判が2019(平成31)年3月12日、大阪地裁で開かれた。
被告の社長は起訴内容を大筋で認めつつ、一部は「架空との意識はなかった」と主張していたが、裁判長は「実質的に被告が1人で会社を経営しており、架空の経費計上を認識していたと認められる」「実体のない会社の銀行口座に金を振り込んで引き出すなど、所得の秘匿工作は巧妙で悪質」として懲役2年、執行猶予3年、罰金3000万円(求刑懲役2年6月、罰金4300万円)を言い渡した。
法人としての同社も同罪などで起訴されており、求刑通り罰金2000万円を言い渡した。
脱税額:約2億1000万円
量刑:懲役2年、執行猶予3年、罰金3000万円(社長)
罰金2000万円(会社)
脱税事件:量刑ファイル004
事件の概要
東京・銀座などの繁華街でビルを経営し、10億6000万円を脱税したとして法人税法違反の罪に問われたビルオーナーの被告(当時86歳)の判決公判が2018(平成30)年11月20日、東京地裁であり、裁判長は懲役4年、罰金2億4000万円(求刑懲役5年、罰金3億円)を言い渡した。
ビルオーナーの被告は、2011(平成23)年12月期までの3年間、社長を務めていたビル管理会社(清算)の法人所得計約35億43004万円を隠し、法人税約10億6000万円を脱税。
2013(平成25)年3月に逮捕、起訴され、同年6月の初公判で「全部でたらめです」と無罪を主張。その後、たびたび弁護人が交代して公判が長期化し、判決まで約5年半かかった。
裁判長は、ビルオーナーの被告が税理担当者に虚偽の確定申告書を作成するよう指示し、脱税していたと認定。
「脱税規模は極めて大きく、所得隠しの手口も巧妙。被告のしたい放題に売上や経費を操作しており、納税義務をないがしろにした」と指摘した。
脱税額:約10億6000万円
量刑:懲役4年、罰金2億4000万円
脱税事件:量刑ファイル005
事件の概要
法人税計約5900万円を免れたとして、法人税法違反などの罪に問われた建設会社(大阪市)と、前社長の被告(当時50歳)の判決公判が2018(平成30)年3月15日、大阪地裁で開かれ、裁判官は「所得を隠す工作は巧妙な手口で悪質」として、被告に懲役1年、執行猶予3年(求刑懲役1年)、法人としての同社に罰金1200万円(求刑罰金1700万円)を言い渡した。
判決などによると、被告は取引先の代表者に架空の請求書を作成させるなどして、架空の外注費を計上。
法人所得計約2億3000万円を隠し、資金は会社の事業資金に充てる目的で現金で留保していたという。
脱税額:約5900万円
量刑:懲役1年、執行猶予(前社長)
罰金1200万円(会社)
脱税事件:量刑ファイル006
事件の概要
2018(平成30)年1月23日、輸出免税の還付制度を使って約17億円を脱税したとして消費税法違反罪などに問われた宝飾品販売会社(名古屋市中区)社長(当時50歳)と、法人としての同社など4社に対する判決公判が大阪地裁で開かれ、裁判長は被告の社長に懲役7年6月、罰金6000万円(求刑懲役10年、罰金9000万円)、4社に対して罰金計約3億4100万円(求刑計4億4100万円)を言い渡した。
起訴状などによると、被告の社長2010(平成22)〜2016(平成28)年までの6年間で、高級腕時計の架空の仕入れを計上する手口で、消費税約11億円の支払いを免れたほか、輸出する商品の仕入れには消費税が課されない制度を悪用し、4社で計約6億8000万円の還付を不正に受けたとしている。
脱税額:約17億8000万円
量刑:懲役7年6月、罰金6000万円(社長)
罰金計約3億4100万円(4社)
脱税事件:量刑ファイル007
事件の概要
レース用自動車やバイクの部品開発で知られる会社の社長(当時75歳)が元監査役と共謀し、2000(平成12)年10月期までの3年間に会社の所得約28億円を隠し、約10億円を脱税したとして、2011(平成23)年、法人税法違反罪で社長に懲役2年、法人に罰金2億4000万円が最高裁で確定。
2017(平成29)年4月、男性は有罪判決を不服として、東京高裁に再審請求を申し立てた(会社も同日、さいたま地裁に再審請求)。
男性は再審請求書で、「隠したとされた所得は元監査役が会社から不正に引き出したもので、自分はまったく知らなかった」と主張し、元監査役の資金流用が認められた民事訴訟の資料を新証拠として提出した。(元監査役は二審判決で懲役3年)
違反名:法人税法違反
脱税額:約10億円
量刑:懲役2年(社長)
懲役3年(元監査役)
罰金2億4000万円(会社)
脱税事件:量刑ファイル008
事件の概要
葬儀会社2社の元実質経営者が、2011(平成23)年の各決算期までの3年間に、架空経費の計上などで計約3億8000万円の所得を隠し、法人税計約1億1000万円を免れたとして法人税法違反罪に問われた。
東京地裁は2016年6月、被告の男(当時65歳)に対し、懲役1年6月、執行猶予4年、罰金1700万円(求刑懲役1年6月、罰金2000万円)、法人としての2社には、罰金計1050万円(求刑同1200万円)を言い渡した。
違反名:法人税法違反
脱税額:約1億1000万円
量刑:懲役1年6月、執行猶予4年、罰金1700万円(社長)
罰金計1050万円(2社)
脱税事件:量刑ファイル009
事件の概要
脱税に協力してもらう謝礼として大阪国税局職員に現金を渡したなどとして、贈賄や法人税法違反などの罪に問われた同局OBの元税理士で被告の男(当時63歳)の判決公判が大阪地裁で開かれた。
裁判所は、「税理士としての知識を悪用し、脱税工作を主導した」として懲役6年、罰金7000万円(求刑懲役8年、罰金1億円)を言い渡した。
事件が起きたのは2011(平成23)年9月。
顧問先の税務調査の日程を教わるなどした見返りに元国税局職員の被告の男(当時45歳・加重収賄罪などで1、2審有罪、上告中)に120万円を渡したほか、顧問先の脱税を指南するなどした。
被告側は公判で、贈賄について「謝礼として金を渡したことはない」と無罪を主張したが、裁判長は捜査段階で収賄を認めた元国税局職員の供述を「具体的で信用できる」と判断し、贈賄罪の成立を認めた。
裁判長は、顧問先に指南するなどして脱税した額は計約2億7000万円に上るとし、「税務行政の公正、社会の信頼を著しく害した」と非難した。
違反名:法人税法違反など
脱税額:約2億7000万円
量刑:懲役6年、罰金7000万円
脱税事件:量刑ファイル010
事件の概要
「ハンドパワーで病気の痛みを取る」と称して資金を集めていたセミナー企画会社(福岡県)の脱税事件で、福岡地裁は法人税法違反などに問われた元社長の女(当時66歳)に対し、懲役2年(求刑・懲役3年6月)の実刑判決を言い渡した。
共犯に問われた前社長の男(当時60歳)には懲役1年8月(求刑・懲役2年6月)、元役員の女(当時50歳)には同1年4月(求刑・懲役2年)、法人としての同社には罰金1億5000万円(求刑・罰金2億6000万円)を、それぞれ言い渡した。
被告3人は、2008(平成20)年2月期~2010(平成22)年2月期の3年間で、売り上げの一部を除外し、経費を水増し請求するなどして約27億円の同社の所得を隠し、約8億円の法人税を脱税したなどとして起訴されていた。
脱税額:約8億円
量刑:懲役2年(元社長)
懲役1年8月(前社長)
懲役1年4月(元役員)
罰金1億5000万円(会社)
脱税事件:量刑ファイル011
事件の概要
2010(平成22)年5月~2012(24)年12月にかけて、キャバクラなどの飲食店グループの従業員らの給与から源泉徴収した所得税約3億6900万円を脱税し、2010年と2011年分の消費税と地方消費税計約4000万円も脱税したとして、経営者の妻が所得税法違反や消費税法違反などの罪に問われた。
福岡地裁は2017年3月、被告(当時70歳)に対して懲役3年、執行猶予5年、罰金2000万円(求刑懲役5年、罰金1億3600万円)の判決を言い渡した。
裁判所は、「被告はグループ全体の金銭管理を統括し、経営者の夫に協力してグループにとって自由になる金を留保し、他の使途に流用する犯行に及んだ。
脱税額は高額で、厳しい非難に値する」と指摘。 一方、脱税した約4億円を完納し、関与を認めて反省している点を考慮し、懲役刑の執行を猶予した。
脱税額:所得税約3億6000万円、消費税約4000万円
量刑:経営者の妻:懲役3年、執行猶予5年、罰金2000万円
(完納済み)
脱税事件:量刑ファイル012
事件の概要
2017年5月、東京地裁は、印税収入を隠すなどして約2600万円を脱税したとして、所得税法違反の罪に問われた著述業の男(当時59歳)に、懲役1年、執行猶予4年、罰金600万円(求刑懲役1年、罰金800万円)の判決を言い渡した。
裁判所は、「個人の脱税として軽視できない規模。長期間、巧妙に秘匿工作をしており悪質だ」と述べ、離婚に備えて資金を残したかったとする被告の動機は「納税しない理由になり得ない」と指摘した。
判決によると、2011(平成23)年~2013(平成25)年、印税を米国の銀行口座に入金させて隠すなどして、所得税計約2600万円を免れた。
脱税額:約2600万円
量刑:懲役1年、執行猶予4年、罰金600万円
脱税事件:量刑ファイル013
事件の概要
2015年7月、東京地裁は、いわゆる霊感商法で得た収入を少なく申告するなどして所得税を免れたとして所得税法違反罪に問われた会社員の男(当時35歳)に対し、「納税に対する規範意識の低さは強く非難されるべきだ」として、懲役1年、執行猶予3年、罰金1300万円(求刑懲役1年、罰金1800万円)を言い渡した。
被告は起訴事実を認めており、裁判官は「本税や延滞税を納付し、加算税についても今後納付していくと述べており、反省もしている」として執行猶予とした。
判決によると、被告は実際の所得金額の一部しか申告しない「つまみ申告」の手口などで、2011(平成23)年と2012(平成24年)の個人所得計約1億6500万円を隠したとしている。
脱税額:不明、所得隠し約1億6500万円
量刑:懲役1年、執行猶予3年、罰金1300万円
(完納済み)
脱税事件:量刑ファイル014
事件の概要
さいたま地裁は2015年6月、低額宿泊所の入居者から生活保護費を搾取する、いわゆる「貧困ビジネス」で得た所得から約6184万円を脱税したとして、所得税法違反罪に問われた宿泊所運営者で元機械製造会社社長の男(当時73歳)に対し、懲役1年6月、執行猶予3年、罰金1500万円(求刑・懲役1年6月、罰金2000万円)を言い渡した。
裁判長は、「被告の脱税率が99%を上回り、国の課税権を著しく侵害している」と指摘したが、前科がなく事実関係を争わずに反省していることなどを執行猶予の理由とした。
判決などによると、被告は2009(平成21)年~2010(平成22)年に宿泊所の運営による所得が計約1億6900万円あったにもかかわらず、その大半を知人や親族名義の複数口座に預金するなどして隠し、所得税計約6184万円を免れたとしている。
脱税額:約6184万円
量刑:懲役1年6月、執行猶予3年、罰金1500万円
脱税事件:量刑ファイル015
事件の概要
大阪地裁は2017年1月、和歌山県の社会福祉法人への寄付を装い、相続税約4億9000万円を脱税したとして相続税法違反罪などに問われた元税理士の男(当時64歳)に対し、「遺言書を偽造するなど犯行は計画的で悪質」として、懲役3年、執行猶予4年、罰金800万円(求刑懲役3年、罰金1000万円)を言い渡した。
また、大阪地裁は2017年5月、共謀した和歌山県議の男(当時58歳)に対し、「立場と人脈を利用して寄付を受け入れさせ、脱税に重要な役割を果たした」として、懲役1年6月、執行猶予3年、罰金500万円(求刑・懲役1年6月、罰金500万円)を言い渡した。
被告は、「正当な寄付だと考えていた」と無罪を主張したが、裁判長は「相続税対策と知った上で協力した」と指摘し、報酬として計900万円を受け取ったと認定した。
判決によると、この事件は、元税理士の男や和歌山県議の男が、死亡した兄の遺産を相続した男(当時73歳・相続税法違反罪などで起訴、控訴中)ら5人と共謀して、2014(平成26)年9月、約10億5000万円の遺産のうち約8億5000万円を和歌山県日高川町の社会福祉法人に寄付したように装い、相続税約4億9000万円を不正に免れたというもの。
脱税額:約4億9000万円
量刑:懲役3年、執行猶予4年、罰金800万円(元税理士)
懲役1年6月、執行猶予3年、罰金500万円(県議)
・脱税の弁護士相談SOS
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