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弁護士法人みらい総合法律事務所

相続税で名義預金を否定した裁決(審査請求)

監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所
 代表社員 弁護士 谷原誠

最終更新日 2024年7月29日

相続税の税務調査において、名義預金と認定され更正処分を受けた事案において、名義預金を否定して処分を取り消した裁決例を解説します。

国税不服審判所令和4年2月15日裁決です。

(事案)

相続人は、配偶者、長男、二男である。

請求人らは、被相続人名義の預金から出金した8577万4000円のうち、600万円を相続財産として相続税申告をした。

税務調査により、処分庁は、出金された現金、配偶者及び二男の預金を被相続人の相続財産と認定し、更正処分等をした。

処分庁は、被相続人と被相続人の生涯年収を調査し、両者の生涯収入の比率は、本件被相続人が95.31パーセント、本件配偶者が4.69パーセントとなるから、本件被相続人又は本件配偶者のいずれかに帰属する金融資産のほとんどは本件被相続人の出えんにより形成されていたと主張しました。

(裁決)

本件申告計上預貯金口座で管理運用されていた預貯金の原資が特定できない。

本件申告計上預貯金と本件出金現金を合わせると約3億円に近い金額となり、地方公務員であった本件被相続人の生涯収入から合理的に推認される金額よりも多額であり、不自然な点がある。

本件配偶者も収入を得ていたと認められる。

あん分計算の前提となる本件被相続人及び本件配偶者の各生涯収入に基づく適切な収入比率を求めることができない。

請求人らは、申告書に計上した600万円をもって相続財産として認識していたことがうかがわれるが、これは、本件被相続人及び本件配偶者の金融資産への貢献度を考慮したあん分方法などにより計算したが、これらは必ずしも客観的合理性が担保されたものではないが、当該あん分方法やこれにより算出された本件申告計上現預金を積極的に否定する証拠関係は認められず、不合理なものとまではいえない。

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以上です。

被相続人名義の預貯金の中に、相続人の預貯金が混在するケースがある場合には、当該預貯金が誰に帰属すると認定して相続税の申告をするのか困難な判断を迫られます。

この場合の1つの合理的な方法が、被相続人と相続人のそれぞれの生涯収入を確認し、あん分計算をする方法であるといえます。

しかし、生涯収入が明らかにならない場合には、客観的合理性を持たないあん分方法であったとしても、一定の方法であん分計算をして相続税の申告をしておくことによって、それ以上の金額が被相続人に帰属することを原処分庁が立証できない場合には、申告金額をもって被相続人の相続財産であると認定される可能性があることを示しています。

この場合、不合理な方法によりあん分計算をしてしまうと、その計算方法も排斥される可能性があるので、自ら合理的と考えられるあん分計算をすることが必要と考えられます。

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