今回は、譲渡所得において、弁護士費用が取得費や譲渡費用が該当するか、についてまとめます。
取得費とは、
・その資産の取得に要した金額
・設備費
・改良費
です(所基通33-7)。
まずは、通達から。
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所基通38-2 取得に関し争いのある資産につきその所有権等を確保するために直接要した訴訟費用、和解費用等の額は、その支出した年分の各種所得の金額の計算上必要経費に算入されたものを除き、資産の取得に要した金額とする。
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これは、例えば売買契約により不動産を購入したものの、契約の錯誤や取消を主張され、裁判になった場合に、勝訴判決を得て所有権を確保したような場合です。
しかし、所有権を取得した後、第三者から所有権を主張された時に支出した弁護士費用は、取得費になりません。
所有権を取得した後の紛争解決費用については、「取得に要した金額」ではなく、すでに取得した財産を維持・管理するための費用であるためです。
遺産分割のために要した弁護士費用も土地の譲渡所得を計算するうえでの資産の取得費には該当しません(東京高裁平成23年4月14日判決)。
遺産分割に要した費用は、一般的に当該資産の客観的価額を更正するものとは認められないとされています。
次に、譲渡費用です。
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所基通33-7
資産の譲渡に係る次に掲げる費用(取得費とされるものを除く。)をいう。
(1)資産の譲渡に際して支出した仲介手数料、運搬費、登記若しくは登録に要する費用その他当該譲渡のために直接要した費用
(2)(1)に掲げる費用のほか、借家人等を立ち退かせるための立退料、土地(借地権を含む。以下33-8までにおいて同じ。)を譲渡するためその土地の上にある建物等の取壊しに要した費用、既に売買契約を締結している資産を更に有利な条件で他に譲渡するため当該契約を解除したことに伴い支出する違約金その他当該資産の譲渡価額を増加させるため当該譲渡に際して支出した費用
(注)譲渡資産の修繕費、固定資産税その他その資産の維持又は管理に要した費用は、譲渡費用に含まれないことに留意する。
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譲渡所得の原因となった売買契約に基づく売買代金未払いの場合の売買代金請求訴訟の弁護士費用は譲渡費用には該当しません。
国税庁の質疑応答事例があります。
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譲渡代金の取立てに要した弁護士費用等と譲渡費用
【照会要旨】
資産の譲渡代金(5億円余)の取立てに関して300万円余を弁護士に支払った事例がありますが、この弁護士費用は、譲渡費用として譲渡所得の金額の計算上控除することができますか。
【回答要旨】
照会の場合の弁護士費用は、譲渡代金の取立てに要した費用であり、「譲渡に要した費用」ではありませんから、譲渡費用として控除することはできません。
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また、時効取得を原因とする土地所有権移転登記手続請求訴訟の弁護士費用は取得費にも譲渡費用にも該当しないとされた裁判例があります(東京地裁平成4年3月10日判決)。
土地の時効取得は、時効の援用の意思表示により効果を生ずるのであり、所有権を取得した後、所有権移転登記を請求するのは、登記に要した費用であり、取得に要した費用でも譲渡に要した費用でもないためです。
ちょっと複雑な案件としては、土地明渡請求訴訟を弁護士に委任して裁判中、和解の話になって、話し合いの結果、土地を第三者に売却することで解決した事案があります。
この弁護士費用は、譲渡費用に該当するかが争われたものがあり、大阪地裁昭和60年7月30日判決は、譲渡費用に算入できない、としました。
譲渡のために直接要した弁護士費用を明確にできないためです。
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