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弁護士法人みらい総合法律事務所

住居費の必要経費性が否認された裁判例(税務訴訟)

監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所
 代表社員 弁護士 谷原誠

最終更新日 2024年7月29日

今回は、所得税確定申告における必要経費が争われた事例をご紹介します。

東京地裁平成25年10月17日判決(TAINS Z263-12310)です。

納税者は、女性で、夫と共同で、生命保険代理店をしていました。

納税者が、事業所得の金額の計算上、次の支出を必要経費に算入して申告しました。

①納税者が居住する住宅に係る地代家賃

②水道光熱費

③長男に係る義務教育代行費用(教育費用)

④長男に関する係争に係る弁護士費用

税務署は、これら支出は家事上の経費であるとして更正処分をした。

原告は、税務訴訟(処分取消訴訟)を提起した。

【裁判所の判断】

●家事関連費のうち必要経費に算入することを認めるためには、当該金額が、

①事業所得等を生ずべき業務の遂行上必要であること

②その必要な部分の金額が明確に区分されていること

の二つの要件を満たすことが必要。

①納税者が居住する住宅に係る地代家賃

●本件住宅において、代理店や顧客を招いて、商品説明やセミナー等を開催していたことが認められる。

●しかし、全体として居住の用に供されるべき3LDKの2階建て住宅であり、その構造上、本件住宅の一部について、居住用部分と事業用部分とを明確に区分することができる状態にない。

●リビング等を各業務の専用スペースとして常時使用し、それ以外の用向きには使用していない。

→必要経費として認めない。

②水道光熱費

●本件住宅のうち各業務の遂行のために使用されるいわば専用スペースとして使用されていた部分はない。

●リビング等が各業務に使用されていた実態も明らかではないから、各業務の遂行のために必要な部分として明確に区分できない。

→必要経費として認めない。

③納税者の長男は、PTSDに罹患していると診断されているが、義務教育代行費用(教育費用)と各業務との関連性が明らかではない。

→必要経費として認めない。

④長男に関する係争に係る弁護士費用

●一般に、事業を行う者が、事業所得による収益の補填を目的として、事業所得の減少分に係る損害賠償請求訴訟を提起することを弁護士に依頼した場合には、その費用は、総収入金額を得るために直接要した費用ということができるから、その金額は必要経費に算入することができるというべきである。

● 本件弁護士費用は、納税者が主張するとおり、市に対し、各業務に係る売上げの減少による損害賠償を求める訴訟を提起すること及びそのための事前交渉を弁護士に委任した際の着手金である旨認めるのが相当であり、納税者と夫は、各業務に関する必要経費を依頼者名義及び夫名義で支払っていることから、本件弁護士費用の2分の1に相当する金額については、納税者の必要経費と認めるのが相当である。

→必要経費として認められる。

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本件で、裁判所は、家事関連費のうち必要経費に算入することを認めるための要件として、

①業務の遂行上の必要性

②明確区分性

を要求し、各支出が、上記①②の要件を満たすかどうかを個別に検討しています。

今年の所得税確定申告業務で参考していただければと思います。

ちなみに、各支出が必要経費に算入することが許されるかどうか、というのは、税務判断です。

税理士が必要な情報を入手した上で税務判断をし、それが誤りだったときには、債務不履行に基づく損害賠償に発展することもあり得ますので、税理士さんは、ご注意ください。

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