今回は、名義不動産についての裁判例をご紹介します。
岡山地裁平成28年5月31日判決(TAINZ Z888-2048)です。
(事案の概要)
※事実関係と争点が多岐にわたるので、名義不動産について、しかもその一部のみ要約します。
●甲不動産を、納税者の家族A名義で競売により落札し、家族A名義に所有権移転登記をした。
●甲不動産の賃貸借契約の貸し主および賃料収入の預金口座は家族A名義にした。
●家族B名義で、乙不動産を買い受けた。
●乙不動産の賃貸借契約の貸し主および賃料収入の預金口座は家族B名義にした。
(裁判所の判断)
●登記記録上の所有名義人は、反証のない限り、当該不動産を所有するものと推定される。
しかし、
<甲不動産について>
●甲不動産を落札した際、入札手続は納税者が行った。
●甲不動産の落札代金は、納税者の預金口座から出勤された。
●甲不動産の賃料収入口座は、納税者が管理していた。
●家族Aは、賃貸借契約や賃料について具体的に認識していなかった。
●甲不動産は、その後売却されたが、売買手続に家族Aはかかわっておらず、納税者が行った。
<乙不動産について>
●乙不動産を買い受けた際、家族Bは中学3年生であり、納税者と同居していた。
●家族Bは、乙不動産を買い受けた際、売買を知らなかった。
●乙不動産の賃料収入口座は、納税者が管理していた。
●家族Bは、賃貸借契約や賃料について具体的に認識していなかった。
→甲不動産も乙不動産も、納税者の所有である。
名義不動産(収益物件)の場合には、一般的は、次の要素を検討する必要があるでしょう。
・不動産購入手続は誰が行ったか
・名義人に不動産購入原資はあるか
・実際の売買代金の出捐者は誰か
・預金通帳、印鑑、契約等の管理は誰か
・不動産を現実的に管理しているのは誰か
・名義人は不動産購入や賃貸借契約等を具体的に認識していたか
・賃料収入から利得を得ているのは誰か
・名義人は、不動産収入について確定申告をしているか
国税不服審判所に対する審査請求・税務訴訟は、ご相談ください。