今回は、個人事業主が関係会社に対して支払った業務委託費が必要経費ではないとして否認された裁判例を紹介します。
納税者敗訴です。
大阪地裁平成30年4月19日判決です。
AはLPガス、A重油、灯油等の燃料小売業を営んでいました。
Aは、平成22年分から平成24年分までの所得税の確定申告において、原告が代表者を務めるB社にAの業務を委託したとして、その外注費を事業所得の金額の計算上必要経費に算入した上で、所得税確定申告をしました。
税務署が税務調査の結果、外周日は必要経費ではないとして、更正及び過少申告加算税の賦課決定処分をしました。
原告は、税務訴訟(処分取消訴訟)を提起しました。
大阪地裁は、次のように判断しました。
(必要経費該当性の法解釈)
●関係規定の文言及びその趣旨を踏まえると、ある所得が事業所得の金額の計算上必要経費として控除されるためには、当該支出が事業所得を生ずべき業務と合理的な関連性を有し(関連性要件)、かつ、当該業務の遂行上必要であること(必要性要件)を要すると解するのが相当である。
(社会通念による客観的判断)
●そして、必要経費該当性の判断に当たっては、客観的な見地から判断すべきであり、また、当該支出の外形や名目等から形式的類型的に判断するのではなく、当該業務の内容、当該支出及びその原因となった契約の内容など個別具体的な諸事情に即し、社会通念に従って実質的に判断すべきである。
(事実認定)
●原告は、自己の個人事業(A)に係る業務全般を、自己の保有する設備、車両等や資格を用いて、日常的に、自己の経験と判断に基づき、自己の労力及び経費負担をもって遂行していたものというべきである。
●原告による委託業務の遂行の実質は、B社による役務の提供(業務委託)や労働力の提供(労働者派遣)といったものではなく、正に原告が自らAの事業主として主体的にその業務を遂行していたものというほかはない。
●そうすると、Aの業務に関し、Aたる原告がB社に対し本件配達販売を委託し、B社がこれを遂行し、原告からB社に対し本件外注費が支払われたという形式及び外観が存在するものの、その実質は、原告が自らAの事業主としてその業務を遂行する一方で、本件取決めに基づく取扱いを継続することにより、本来支払う必要のない事業主自身の労働の対価(報酬)を、「外注配達費」や「人夫派遣費」という名目で本件外注費としてB社に支払っていたものといわざるを得ない。
(当てはめ)
●以上によれば、本件外注費は、社会通念上、Aの業務の遂行上必要であるとはいえず、必要経費該当性の判断基準における必要性要件を欠くものと認められるから、原告の事業所得に係る必要経費には該当しないというべきである。
============
以上です。
所得の高い個人事業主が、法人を設立し、その法人に対して業務の一部を外注することがあると思います。
この場合、法人に実体がない場合には、外注業務が法人の業務とは認められず、個人事業としての業務と認定されてしまう可能性がある、ということです。
この判決では、
・個人の保有する設備・車両・資格を用いて業務を行った
・個人の経費負担をもって業務を行った
ことなどが判断材料になっています。
この他にも個人事業の事務所と法人の事務所が同一かどうか、従業員が同一かどうか、法人は個人事業の外注以外にも業務を行っているか、などが判断材料になりうるものと思います。
気をつけたいところです。
国税不服審判所に対する審査請求・税務訴訟は、ご相談ください。