過少申告の意図は認められたものの、隠蔽または仮装がないとして重加算税が取り消された裁決例をご紹介します。
令和元年6月24日裁決です。
(事案)
請求人は、帳簿を作成していなかったので、請求人の妻が確定申告時期に売上金額や必要経費の金額を1年間分まとめて集計して収支内訳書を作成していた。
妻は、収支内訳書を作成する際、従業員の売上などを除外するなどして実際の売上の5割にも満たない金額で収支内訳書を作成したが、その理由は、売上を全額計上すると税金が支払えないと考えたためであった。
妻は集計作業の過程で広告の裏紙などで計算した金額を記載することもあったが、申告後メモは廃棄していた。
(裁決の規範)
重加算税を課するためには、納税者のした過少申告行為そのものが隠ぺい、仮装に当たるというだけでは足りず、過少申告行為そのものとは別に、隠ぺい、仮装と評価すべき行為が存在し、これに合わせた過少申告がされたことを要するものである。
納税者が、当初から所得を過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づく過少申告をしたような場合には、右重加算税の賦課要件が満たされるものと解すべきである。」(最高裁平成7年4月28日判決)
(裁決)
当初より過少申告の意図は認められる。
過少申告に至る過程で、請求人が架空名義の請求書を作成し、架空名義の本件各支払明細書を作成させ、あるいは、他人名義の預金口座に売上代金を入金させたというような事実は認められない。
本件各支払明細書や領収証等の取引に関する書類を改ざんし、あるいは本件売上メモを作成し、又はこれらの書類を意図的に破棄・隠匿したなどの事実も認められない。
本件調査の際には、当初から売上金額の過少計上の事実を認めつつ、これらの書類を本件調査担当職員に提示していたという事情に鑑みると、当該行為をもって真実の所得解明に困難が伴う状況を作出するための隠蔽又は仮装の行為と評価することは困難である。
これらのことからすると、上記の各過少申告に至る過程で、請求人に隠蔽又は仮装と評価すべき行為があったということはできない。
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以上です。
税務調査の過程で、売上除外が発見された場合には、重加算税の指摘が多くあると思います。
しかし、重加算税の賦課要件を満たすには、
・過少申告
・売上除外
だけでは足りず、
・隠蔽又は仮装行為
が必要であり、その立証責任は国側にあります。
本件のように、売上除外があっても、
・積極的な隠蔽又は仮装行為がなく
・調査の際も隠そうとする態度がなく、当初から素直に資料を提出した
ような場合には、重加算税を争う価値がある事案、ということになります。
重加算税指摘があった場合には、ぜひ、ご検討いただければと思います。
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