今回は、事実認定を誤ったことによる損害賠償請求で、税理士が勝訴した神戸地裁平成14年6月18日判決をご紹介します。
(事案)
Xらは、相続税申告業務をYに委任した。
財産評価基本通達24は「私道の用に供されている宅地の価額は11(評価の方式)から21-2(倍率方式による評価)までの定めにより計算した価額の100分の60に相当する価額によって評価する。この場合において、その私道が不特定多数の者の通行の用に供されているときは、その私道の価額は評価しない。」と規定されている。
相続財産には、私道が含まれていたが、Yは、本件私道を不特定多数の者の通行の用に供されているとは判断せずに相続税申告書を作成、提出した。
しかし、実際には、本件私道は、不特定多数の者の通行の用に供されていた。
その結果、Xらは、過大な相続税を負担した等の損害を被ったとしてYに対して損害賠償請求をした。
(判決)
被告は、Xとの間の委任契約上、税理士として、相続税のための財産評価にあたり、財産評価基本通達を含む法令に則り、依頼者のためにできるだけ有利な評価を採用するようにする注意義務があり、そのため必要な質問や調査を尽くすべき義務があるというべきである。
本件私道は、不特定多数の者の通行に供されていたが、近隣紛争により、近隣者によって、不特定多数の者が通ることのできる階段は撤去され、北側道路には通じなくなっっており、税理士が現地調査に訪れた平成7年6月13日時点でも同様であった。
本件私道の些少な部分が隣地の車の通行のために使用されていたが、現場の状況からそれを想定することは、著しく困難。
税理士が、本件私道部分全体が車庫の専用通路と判断したとしても、その判断が不合理であるということはできない。
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つまり、事実認定が誤っていたからといって、必ず注意義務違反が認定されるわけではない、ということです。
税理士に要求される注意義務を尽くしていれば、事実認定が誤っていても損害賠償責任は発生しません。
裁判では、
①税理士がいかなる調査をしたか、
②いかなる資料に基づいて検討したか、
③どのように判断したか、
が検討されます。
そこで、調査の内容、資料、判断過程、について証拠化しておくことが重要となります。
参考記事:税理士の相続税のミスによる損害賠償責任
・弁護士による税理士損害賠償SOS
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