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弁護士法人みらい総合法律事務所

引当金と事前確定届出給与の関係(審査請求)

監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所
 代表社員 弁護士 谷原誠

最終更新日 2024年7月29日

令和5年2月3日裁決(TAINS F0-2-1196)です。

本件は、前期に計上した役員賞与引当金を取り崩して支給した役員賞与の事前確定届出給与の損金算入を認めた事例です。

なぜ、これが争われるかというと、企業会計原則注解第18に起因します。

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将来の特定の費用又は損失であって、その発生が当期以前の事象に起因し、発生の可能性が高く、かつ、その金額を合理的に見積ることができる場合には、当期の負担に属する金額を当期の費用又は損失として引当金に繰入れ、当該引当金の残高を貸借対照表の負債の部又は資産の部に記載するものとする。

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引当金は、「その発生が当期以前の事象に起因」することを前提としていることから、役員賞与は、「過去の職務執行期間の対価」であり、「当期の職務執行期間の対価」ではないのではないか、という論点です。

この論点について、裁決は、次のように判断しました。

(裁決)

本件においては、各役員給与が当職務執行期間における職務執行の対価であるか否かが争われているところ、請求人においては、役員給与の各人への支給額等の決定権限は、株主総会から取締役会に適法に委任されており、各取締役が選任(再任)された定時株主総会と同日に開催された取締役会において、各役員給与の支給内容が決定されたことについて、当事者間に争いはなく、当審判所の調査及び審理の結果によっても、その事実が認められる。

そうすると、本件各役員給与が当職務執行期間における職務執行の対価であるか否かは、取締役会が各役員給与を当職務執行期間における職務執行の対価として決定したか否かによって判断すべきである。

請求人の定時株主総会と同日開催の取締役会の議事録には、各役員給与をいつの職務執行に対する役員給与として決定したかを明確に示す記載はないものの、各役員給与が過去の職務執行の対価であることをうかがわせる記載もなく、むしろ、請求人が、各役員給与を、同日開催された定時株主総会で選任(再任)された各取締役を対象に、当職務執行期間における職務執行の対価と認められる毎月の定額報酬の額と合計した上で承認していたことからすれば、本件各役員給与は毎月の定額報酬と同様、当職務執行期間の職務執行の対価として決議されたと考えるのが自然である。

請求人は、定時株主総会と同日開催の取締役会において、当職務執行期間における職務執行の対価として各役員給与の支給を決定し、法人税法施行令69条4項1号に規定する決議をしたものと認められる。

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以上です。

ポイントは、会社が、当該役員給与を「どの職務執行期間に対する給与」として届出をし、支給したか、という点です。

原処分庁は、企業会計原則を前提として、過去の職務執行期間に対する給与であるとして否認しました。

週刊税務通信NO.3799でも、本件裁決は「個別事例の一つ」であり、「引当金処理による支給は事前確定給与の対象外」として、この裁決の結論に抵抗を示しています。

しかし、引当金処理をしたことは、総合的な事実認定における一つの間接事実に過ぎません。

それを踏まえた上で、あくまでも事前確定届出給与を決定した株主総会(本件では株主総会で総額上限額を決議し、各取締役の支給額等については取締役会に一任していた)において、どの職務執行期間に対する給与として決議したのかが問われることになります。

実務において、次期の役員給与を役員賞与引当金として会計処理をし、それを次期において事前確定届出給与として処理することあるかもしれませんが、この裁決があったとしても、税務調査があった場合には、指摘されると予想しますので、ご注意ください。

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